新型コロナ、感染拡大から2年が過ぎて
タイとインドの社説は「ウィズコロナ」をどうみているか
- 2022/4/9
新型コロナの感染拡大が始まって2年が過ぎた。
世界では、新規感染者が今も増えている一方、ワクチン接種や治療薬の開発が進み、コロナ対策をしつつも生活や経済活動の正常化を模索する動きが各地で広がっている。アジア各地のメディアは、「2年後」のウィズコロナをどう見ているのだろうか。
規制撤廃を打ち出す政府に疑問
タイの英字紙バンコクポストは、コロナ対策が新たなフェーズに入ったことを認めながらも、「油断をするな」と警告する。
タイ政府は3月半ば、今年7月1日以降は新型コロナを「エンデミック」として格下げし、さまざまな行動規制を撤廃する方針を打ち出した。現地の報道によると、タイ政府は新型コロナをインフルエンザなどと同じ風土病(エンデミック)として位置付け、7月までの期間を3段階に分けて、規制撤廃に向けた準備を進めるという。7月には、入国者へのワクチン接種の義務付けや感染検査も撤廃される見込みだ。
この動きについて、バンコクポストは懐疑的な見方を示す。
「多くの保健関係者は、感染拡大は抑制されたと言いたがらない。アントニオ・グレーテス国連事務総長も、『パンデミックは終わっていない』と強調している。確かに、オーストリアは最近、ワクチン接種の義務化を取り下げたし、英国への旅行者は、厳しい隔離措置を義務付けられることもない。デンマークでは、マスクの着用が義務ではなくなった。これらは、新型コロナ対策が緩和されつつある一例だが、そのような動きが出てもまだ、世界の専門家たちは、パンデミックは終わったと宣言しない。彼らにとっても未知の領域がある新型コロナなのだから、慎重に対応することが必要だ」
また、タイ政府が「エンデミック」と位置付けることについて、「この政策に基づけば、新型コロナの感染患者は0.1%を超えてはならないが、現在、タイの感染患者率は0.18%となっている」とも指摘する。
バンコクポストが引用するのは、香港の状況だ。香港では中国政府の「ゼロコロナ」政策を受けて、新型コロナ感染抑制について厳しい措置がとられてきたが、それでもオミクロン株による感染が拡大し、昨年末からの感染者数が「全人口の7人に1人」にまで広がり、市民の不満が高まっているという。
バンコクポストは、「香港の状況は、政府への不信感が、新型コロナとの闘いを複雑なものにしてしまうことを物語っている」と指摘する。タイ政府の「エンデミック」政策が、一時的に国民の閉塞感を変えたとしても、持続的な政策として正しいものになるかどうかは分からない、という見立てだ。
科学力と自立に向け深めた自信
新型コロナの累積感染者数が約4,300万人にのぼったインドは、最大時には一日の新規感染者が40万人を超え、医療崩壊に直面するなど危機的な状況に陥った。しかし、現在では一日の新規感染者は1,000人程度にまで減少している。
インドの英字紙タイムズオブインディアは、3月24日付の社説で、感染拡大抑制に成功した要因の一つとして、ワクチン接種政策の成功を挙げた。「今年の2月8日までで、15歳以上の人口の73%が2回のワクチン接種を終えたという。さらにその費用は2022年度予算のわずか1%で、「低コスト」で実施できた、と社説は指摘する。インドは国内でワクチンを生産しており、社説は「インドの科学力の深さ」を示すものだ、としている。
ただ、混合ワクチン接種や、ブースター接種については引き続き研究が必要だという。社説は「われわれは、海外の研究に頼りすぎていた」としており、ワクチン開発と接種を通じてインドが、この分野での自立に自信を深めたことをうかがわせる。
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新型コロナの感染拡大から2年。それぞれの国で、政府も民間セクターも、そして一人一人の国民も、「生き抜く力」を試されてきた。コロナ政策を通して政府の政策立案力の脆弱さが露呈した国もある。逆に先手を打った行動で信頼を高めた政府もある。新たなニーズを掘り出して急速な成長を遂げた産業セクターもあれば、今も回復にはほど遠いダメージを受けたセクターもある。この2年間で、私たちの暮らしはどのように変わり、社会に向き合う気持ちはどのように変わったのか。しっかり考えながら、次のフェーズへと進みたい。
(原文)
タイ:
https://www.bangkokpost.com/opinion/opinion/2278319/window-dressing-is-no-real-cure
インド: