民主主義の世界的後退とインドネシア
着実に続く前進を信じて

  • 2019/12/19

「世界中で民主主義が困難な状況に直面している。成熟したガバナンスを持つとされる国にも、困難はふりかかっている」。12月初め、インドネシアのバリで開かれた「第11回民主主義フォーラム」には、アジア・太平洋地域の50カ国以上の外相が集い、域内の民主主義の現状について意見交換をしたという。これを受け、12月12日付けのインドネシアの英字紙ジャカルタ・ポストは、民主主義の国際的な潮流について悲観的な見解を示しながらも、「そんな今だからこそ、インドネシアが民主主義の拠点となれ」と、主張している。

2019年10月、大統領選で再選され、就任式で宣誓するジョコ・ウィドド大統領 (c) 新華社/アフロ

苦悩する欧米

 社説ではまず、世界の民主主義的価値観をけん引してきた「欧米」の惨状を指摘する。「米国の場合、民主主義はトランプ大統領の登場とともにほころび始めた。メディアへの執拗なハラスメントの後、トランプ大統領は、民主主義の根本を揺るがす危険な領域に踏み込んだ。米下院では、大統領によるウクライナ疑惑をめぐって弾劾調査が進んでいるが、その協力を拒んでいるのだ。これは、立法府による権力のチェック機能を不全にする行為である」。

 続いて、欧州については、「国家主義や移民排斥の狭量なポピュリズムが発生している」と指摘。さらに、「ロシアや中国、トルコやサウジアラビアなど、民主主義が確立されていない地域では、さらにひどい」「ジョマル・カショギ氏のように、政権批判の口封じを目的とした記者の殺害事件まで発生している」と警告している。

 さらに社説は、こうした概観を証明するかのように、米国に本部を置く国際NGO団体で、毎年世界の自由度を格付けしているフリーダム・ハウスの2019年報告書にも触れている。「フリーダム・ハウスによると、民主主義が14年連続で後退し続けていると指摘しているが、20世紀後半に世界が獲得した全体的な大きさに比べれば、失ったロスは、幸い、まだ小さいと言えよう。だが、民主主義の衰退傾向は継続しており、不吉だ」。

誇らしい成功物語

 では、そうした中で、インドネシアはどんな位置にあるのか。

 社説は、「インドネシアもその一角をなしている」として、民主主義後退の世界的潮流と無縁ではないことを指摘する。「今年一年、民主主義の後退がさまざまな場面で見られた。治安当局や国家警察は、活動家や抗議行動をする人を何の躊躇もなく逮捕するようになったし、インターネットやソーシャルメディアは、いまや、いつでも権力に利用され得る強力なツールに転じる恐れがある。人権団体は、ジャーナリストや活動家への暴力が増えている事実を報告している」

 しかし、ここで社説は歴史を振り返る。今年の大統領選で再選されたジョコ・ウィドド大統領は、これまでのような政治エリートでも軍人でもなく、いわゆる「庶民派」の政治家として注目された。「スハルト時代を知る者たちは、中央ジャワの貧困家庭の出身者が、国家のトップに選出される日がくることなど夢にも思わなかっただろう。しかし、それは確かに起きたのだ。民主主義の誇らしい成功物語であり、世界の人々とも分かち合わなければならない体験である」。

 民主主義をめぐる課題は、確かに多い。しかし、幾度、後退を繰り返しながらでも、着実に前進を続けている。現状を悲観しすぎる前に、希望をつないでいこう。ジャカルタ・ポストの社説からは、そんなメッセージをくみ取ることができるようだ。

 (原文:https://www.thejakartapost.com/academia/2019/12/12/democracy-or-bust.html)

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