外国人留学生の締め出しでゆらぐアメリカン・ドリーム
オンライン授業を認めないトランプ米大統領の方針をネパールの英字紙はどう伝えたか

  • 2020/7/17

 今も新型コロナウイルスの感染が拡大し続けるアメリカ。トランプ大統領は、今秋からの学校再開に先立ち、「オンライン授業だけしか受けていない留学生は滞在を許可しない」との措置を検討している。ネパールの英字紙「カトマンズ・ポスト」は、社説でこの問題をとりあげた。

新型コロナ対策で教育現場のオンライン化が進む中、トランプ米大統領が対面型講義を受けない外国人留学生を締め出す方針を発表したことで波紋が広がっている

「オンライン授業だけなら帰国を」

 アメリカ国内にいる留学生を国別にみると、ネパール人留学生は12番目に多い。「ネパールの若者にとって、アメリカは留学先として人気の高い国」だと社説は指摘する。在ネパールのアメリカ大使館やアメリカ教育基金もまた、イベントやワークショップを通じてネパール人学生たちに米国留学を推奨している。

 しかし、こうした流れを覆すような措置が打ち出された。7月初頭、アメリカ移民・関税執行局は、今秋から学校が再開されるのを前に、「オンラインの授業しか履修しない外国人留学生には学生ビザを与えず、米国内に滞在することを認めない」と、発表した。通っている学校がオンライン授業に移行している場合、通学制の学校に転校するか、帰国するかのどちらかを求めている。

 社説は、「この措置はすでにアメリカにいる数千人のネパール人学生たちにも大きな影響を与えるだろう。トランプ政権は、すでに合法、非合法の移民に対し、新型コロナウイルス対策を理由にさまざまな規制を課している。メキシコからの亡命希望を保留し、非移民労働者への労働ビザ発給も保留した。外国人留学生を対象にしたこの措置は、多くのアメリカの大学が新型コロナウイルス対策で授業をオンライン化しているさなかに発表された」と、指摘する。

 さらに社説は、トランプ大統領がホワイトハウスで開かれた会議の席上で「政府は州知事や教育関係者に対し、新型コロナウイルスの感染拡大が多大な影響を及ぼすなかであっても、秋の新学期からは通常の対面授業に移行するよう圧力をかけるべきだ」と、強く主張したと伝えている。

アメリカ国内からも批判の声

 この措置に対しては、さすがにアメリカ国内からも激しい批判の声があがっている。アメリカ大学協会は声明を発表し、「トランプ政権による新たな政策はとんでもなく見当違いで、大変に残酷な仕打ちだ」と、政権を非難した。さらに同協会は、トランプ政権に対し、新型コロナウイルスの状況も鑑み、留学生に対して対面やオンライン、あるいはそれらを混合した形で学業を継続することを認めるよう求めているという。

 社説は、「新型コロナウイルスの感染拡大を受けて不安定な状況にさらされているネパール人学生たちにとって、現状は、対面授業を行う学校へ転校するか、米国外からオンライン授業で学業を続けるか、どちらかを選択するしかない」と、自国の若者たちが苦境に陥ることを懸念した上で、次のように指摘し、ネパール政府に迅速な対応を求めている。

 「ネパール人留学生たちを予測できない未来から守るために、ネパール政府はただちに外交チャンネルを通じてネパール人学生をこの措置から除外するように求めるべきである。そして、在米のネパール大使館は、アメリカ国内のネパール人留学生の所在を確認し、強制的に帰国せざるを得なくなった場合に備えなければならない。ネパール政府には、ネパール人留学生が安心して学業を続けられるように良い環境を作る義務がある」

 ネパールだけではなく、多くの途上国の若者たちがアメリカという国に希望を抱いて留学している。アメリカン・ドリームという言葉は、古臭くも響くが、今も途上国では十分光輝くフレーズだ。さまざまな問題があるにせよ、アメリカという国はこれまで彼らを受け入れる懐の深さがあった。今、その深みが全くなくなっているのは、新型コロナウイルスのせいだけではないだろう。

 

(原文:https://kathmandupost.com/editorial/2020/07/08/american-dream)

 

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