アジアの社説が伝える「ウィズコロナの時代」
「感染対策を日常化しつつ共存を」

  • 2022/5/22

 日本を含む多くの国で、新型コロナの新規感染者数が減少し、行動制限が緩和されている。観光シーズン、あるいは祝祭日を迎える地域も多く、メディアにも楽観的な論調が目立つ。その一方で、各メディアとも、本格的な「ウィズコロナ」の時期を迎えたとして、必要な警戒心を保ち、感染対策を日常化するよう強調している。

シンガポールは4月下旬、ほとんどの行動制限を撤廃した (c) Adhitya Andanu / Pexels

規制緩和後も感染対策を呼びかけるシンガポール

 シンガポールは4月下旬、新型コロナ感染対策として実施してきたさまざまな行動制限をほとんど撤廃した。例えば、集会の人数制限や、ソーシャルディスタンス確保の緩和、企業の出社人数制限の撤廃なども撤廃された。シンガポールでは新型コロナの新規感染者数が激減しており、2月下旬に2万人を超えていた1日あたりの新規感染者数は、4月下旬には2000人程度にまで減少した。死者数も一桁台になっている。
 シンガポールの英字紙「ストレーツタイムズ」によれば、新規感染者の減少を受けて、政府はこれまで75%と定めていた企業の出社人数の制限や、出社時のマスク着用の義務、1000人までとしていた集会人数の上限、ワクチン接種者に対する出国前の感染検査義務などを撤廃した。
 その一方で、4月27日付けの社説では、「行動制限が緩和されても油断はするな」と題して、次のように注意を呼びかけた。
 「状況は良くなっているように見えるが、政府はまだすべての規制を撤廃したわけではない。いまだすべての変異種に対抗できるワクチンはなく、私たちはこれからもワクチン接種を続けなくてはならない。さらに、室内でのマスク着用や、感染が疑われる時の自己隔離など、必要な警戒心を緩めてはならない。感染力の強い変異種が出てきた場合にも対応できるよう心構えをもっていなくてはならないし、科学者たちは根本的な対策となる方法を探し続けなくてはならない」

マレーシア「最悪の時期は過ぎた」

 5月初旬に最大の祝日であるハリラヤ・プアサを迎えたマレーシアでも、新型コロナ感染防止策が緩和されつつあり、「新型コロナの最悪の時期は過ぎた」との見方が広がっている。同国では、1日あたりの新規感染者数は現在も2000人を超えているものの、3月上旬の前回ピーク時の10分の1ほどに減っており、1日あたりの死亡者数も10人を下回っている。
 マレーシアの英字メディア「ニューストレイツタイムズ」は4月29日付の社説で、「私たちの2年間の我慢が実った」とした上で、「ワクチン接種も奏功して最悪の時期は過ぎた」という見方に同調する。
 「絶対的な保証はないものの、報告されていない分を含めても新規感染者数は減少しており、変異種が発生したとしても重症化しないウイルスとなる可能性が高い」
 その一方で、「楽観的に見て新規感染者が減少し、最悪の状態を脱したとしても、ウイルスは依然として存在している」と指摘。「私たち一人ひとりが感染を広げないようにする責任を負っていることに変わりはない」と、警戒を呼び掛けた。例えば、感染のリスクが高まる状況では、これからも感染対策を実施する必要がある上、重症化リスクの高い人々、例えば高齢者や子どもに接する場合には、マスク着用などの対応が必要だ、と社説は指摘する。

隣国インドの感染者急増に警戒感を強めるネパール

 ネパールでも、同様に新規感染者数が減少している。1日の新規感染者数は20人前後。4月に入ってからは死者が報告されていない。とはいえ、気になるのは隣国インドでの感染者の急増だ。
 現地の報道によると、インドでは4月半ば、新型コロナの新規感染者が急増し、デリーでは1日あたり300人を上回る感染者が報告された。インド国内ではほかに南部ケララ州でも1カ月ぶりに2000人超の新規感染者が報告され、死者が急増しているという。インドでは今年1月、1日あたりの新規感染者が30万人を超える事態になっていたが、その後、一度は急速に感染者が減少。4月上旬には1000人を下回ることもあったが、半ばになって各地で感染者が急増しているという。
4月19日付けのネパールの英字紙「カトマンドゥポスト」は社説でこの問題を採り上げた。
 「隣国インドで新規感染者が急増している報道があるが、パニックになる必要はない。とはいえ、これまでの政府の対策を見ると、遅きに失している。従って、感染者増について注意深くモニターすることが今、最も重要なことだ」
 ネパール経済は、感染拡大によるロックダウンをはじめ、経済活動の制限によって深い痛手を負った。社説は、「経済活動が人命よりも優先されるべきだとは言わないが、今度は、経済状況と感染状況のバランスをみながら、適切なタイミングで活動制限を実施できれば、平常の経済活動を続けながら感染拡大防止ができるだろう」と、指摘している。 
 「私たちがかつて経験したように、あわてて対策を実施し、尻切れトンボに終わるような対策はもう次はしてはならない」

 

(原文)
シンガポール:https://www.straitstimes.com/opinion/st-editorial/the-straits-times-says-staying-vigilant-even-as-most-curbs-are-lifted

マレーシア: https://www.nst.com.my/opinion/leaders/2022/04/792699/nst-leader-reduced-sop

ネパール:https://kathmandupost.com/editorial/2022/04/19/a-bit-of-a-concern)

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