タイでクーデター後初の地方選を実施へ
民主主義の根幹を問い直す好機になるか

  • 2020/12/5

 タイの地方選挙が12月20日に実施される見込みとなった。タイの英字紙バンコク・ポストは、11月26日付の社説でこの問題をとりあげた。

タイで2014年のクーデター後初めてとなる地方選挙が12月20日に実施される

立候補者は8521人

 タイ中央選挙管理委員会によると、バンコクを除く全国76県の「県行政機構(PAO)」の長と議長を選ぶ選挙が12月20日に実施される。これは2014年のクーデター以降、初の地方選挙となる。

 立候補者は、全部で8521人。このうち338人はPAOの首長への立候補者で、残りの8168人は議員への立候補者だ。最も立候補者が多かったのはブリラム県で、352人。最も少なかったのはペチャブリ県の34人だという。

 社説は「当初、この地方選の投票率は高いものになるだろうという期待があった」と指摘する。なぜこの予測が過去形なのかは後述するが、投票率は通常の70~80%を上回る90%になると期待されていた。その背景には、若い世代が政治に強い関心を寄せ、投票を通じて国や行政の方針に判断を下そうとしている、とみられていたことが挙げられる。

 最近のタイは、確かに政治の季節だ。首都バンコクでは、プラユット首相の退陣や王室改革を求めるデモ集会が続いており、その中心にいるのは若い世代だ。今回はバンコク以外の地方選挙だが、若い世代の「変革」を求める気持ちは地方においても同様である可能性がある。

若い世代に参加を呼びかけ

 しかし、社説は「この勢いがすでに落ちつつある」と、指摘する。

 「まず、選挙運動のポスターがとても少ない。これはおそらく候補者たちが、ポスターに費用を使うことを避けているためだろう。さらに、中央選挙管理委員会が、前例がないからという理由で期日前投票を拒んでいる影響大きい」

 社説は、12月20日という投票日の設定はクリスマスや年末年始の長期休暇の直前であり、多くのバンコク都民が投票権のある出身地に戻るには都合がよくない日程だと指摘する。

 また、タイが「政治の季節」の渦中にあることも逆効果になる恐れがあるという。

 「タイでは今、さまざまな政治的な対立が起きている。立場の異なる人々がさまざまな声を上げており、地方選の候補者たちは誤った判断をしないよう慎重に進まなければならない。候補者たちの中には、“分断”を避けるためににあえて特定の政党から離れ、無所属として立候補する人もいる」

 その上で社説は、中央選挙管理委員会がオンラインでの選挙運動を厳しく規制し、その動向をモニターしていることも問題だと指摘した上で、若い世代に積極的に選挙に参加し、「変革」に関与するよう訴える。

 「すべての有権者は、地方の発展のためにPAOの選挙こそが最重要課題であることに早く気が付かなければならない。この国の発展のためには、先進的な考え方とビジョンを持ったPAOが必要なのだ。地方に力強い民主主義が根付くことこそ、理想的なシステムの形だ」

 「地方自治は民主主義の学校」だと言われる。社説も、「公平で透明性の高い地方選挙を実現しよう。地方政治は民主主義の根っこである」と、呼びかけている。

 

(原文: https://www.bangkokpost.com/opinion/opinion/2025539/local-polls-key-for-change)

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