【緊急レポート】感染爆発前夜のケニアのスラム
リスク下でも暮らしを変えられない人々のジレンマ

  • 2020/4/21

 世界中に感染が急速に拡大している新型コロナウィルス。ケニアでは1カ月間の3月12日、初の感染者が報告された。政府はその直後から、国際空港の閉鎖や夜間外出禁止、国会議員や知事の一部給料返納など、矢継ぎ早に対策を打ち出し、現在は、一部都市間の移動禁止、公共交通機関利用時のマスク着用義務や人数制限を行うなど、封じ込めに注力している。医療体制がぜい弱なため、どこまで感染の実態を把握できているかは疑問符がつくとはいえ、こうした初期対応は一定の成果を上げており、4月21日現在、検査数1万3,872件中、感染者281人、死亡者14人、回復者69人となっている。 

住居が過度に密集しているマザレスラムの様子(筆者撮影)

 その一方で、コロナの脅威と、強権的とも言える対策が市民の生活に打撃を与えているのも事実だ。とりわけ、働かなければその日の食費すらまかなえないスラムの人々の暮らしは、ひっ迫している。外部からの支援が届きにくいスラムには、安全が確保されている場所など存在せず、目に見えないウィルスへの恐怖を抱えながら日々を過ごすほかないからだ。

 本記事では、ケニアの首都ナイロビにあるマザレスラムを取り上げ、住民の生活がコロナによっていかに揺さぶられているか、緊急レポートする。

消毒液のない医療クリニック

 アンナ・ニャカビさんは、マザレスラムのコソボ地区にある医療クリニックでヘルスワーカーとして働いている。クリニックは現在、結核や糖尿病、エイズ患者などの入院患者で満床だが、よく知られている通り、持病のある者がコロナに感染した場合の死亡リスクが高いため、アンナさんは院内感染を非常に警戒しているという。「高価なサニタイザー(消毒液)は手に入りにくいため、代わりに石鹸(せっけん)で頻繁に手を洗うよう心がけています」

ヘルスワーカーとしてクリニックに勤務するアンナ・ニャカビさん(筆者撮影)

 さらにアンナさんは、「コロナウィルスについて多くの報道を目にしますが、専門的で正しい情報を伝える指導員がこのスラムまで来ることはないため、住民たちは何が信頼できる情報なのか判別できません」と話し、スラムに住む人々も日々、感染の恐怖に怯え、命の危険を肌で感じながら暮らしていると明かす。

 「ここマザレスラムでひとたび感染が発生すれば、政府や世界保健機関(WHO)が圧倒される早さで広がり、誰にも止められない状況になるでしょう。そうなる前に専門機関が介入し、物資や専門家を投入して感染経路を阻止する必要があります」

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