ケニアの住宅基金政策に怒りの声
青写真のツケは誰が払うべきか

  • 2019/7/14

突然の通達に各方面が反発
 弊社(*編集部注:「THE GATEWAY」を運営するグラスルーツウォーカーズ社)の顧問税理士から、メッセージが入った。「政府の発表によると、住宅基金の資金を集めるため、雇用者および被雇用者の所得から1.5%を強制的に徴収する仕組みが来月からスタートする」という。来月(*編集部注:2019年5月)まであと半月もないタイミングでの突然の通達ということもあり、案の定、この発表は、職業団体をはじめ、各方面から猛烈な反発を受けている。
 社会も敏感に反応している。ケニア国内の主要メディアがこぞってこの問題を大々的に報道しているほか、英国放送協会(BBC)にも取り上げられるなど、注目度は高い。
 政府主導でトップダウンの一方的な法令指示が市民に受け入れられるはずもないのは当然のことだが、そもそもこの問題の本質はどこにあるのかと言えば、現政権が公約に掲げていた政策がいずれも財源の不足により実現が難しいと見られている状況で、当の政府が信頼を欠いていることに尽きる。

疑問視されていた青写真
 住宅建設プロジェクトは、「誰もが購入可能な住宅」を実現するという目標の下でスタートした。これは、製造業の強化、食料安全保障と栄養、そしてすべての人が適切な健康増進、予防、治療、機能回復に関するサービスを支払い可能な費用で受けられるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)に並び、現政権が「ビッグ4」として掲げた大統領肝いりの4本柱の政策の1つで、政権側としては是が非でも実現し、国民の支持を得たいところだ。
ところが、この華々しい「ビッグ4」政策が2018年に発表された途端、「本当に実現できる政策なのか」「財源はどうするのか」といった指摘が相次いだ。巨額の財政出動が必要である上、債務がGDPの半分以上の額まで膨れ上がっていること、そして、税収が目標額に到達しないことなど、不安材料だらけで、現実的な政策とは到底受け止められなかったためだ。今なお、単なる「青写真」に過ぎないとの見方が多く、国民の期待に応えるものには依然としてなり得ていない。

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