ケニアの住宅基金政策に怒りの声
青写真のツケは誰が払うべきか
- 2019/7/14
さて、話を基に戻そう。実は同じような騒動が昨年末にもあった。政府が昨年12月に住宅基金の徴収を発表したのだが、その時は、雇用労使裁判所が差し止めを行い、事態は沈静化したと見られていた。
この時、実質的な課税を「所得からの徴収」と表現した背景には、ウフル大統領の苦しい胸の内があった。昨年末、国内メディアのザ・スター紙は、「国民の皆さまには、今回の住宅基金がこれまでの税金とは異なり、自分の家を持つための貯金や寄付のようなものだとご理解いただきたい」という大統領の発言を伝えた。しかし、この発言に納得し、うなずいた国民がどれほどいたかと言えば、ほとんど皆無であったのが現実だ。そこへ来て、今回の課税発表ときては、市民が怒りを覚えるのも無理はない。
信頼無き政府に誰が金を渡すのか?
理屈からすれば、政権が国民から税金を徴収しても、国民がそのリターンを得られる政策が実施されるのなら、何も問題にはならない。しかも、今回の徴税は、国民に住宅を普及させることが目的とされていたため、一見、国民にとって問題はないように思われる。
だが、実際には、この理屈に同意するケニア人はほとんどいない。徴収された税金は、政治家やステークホルダーの懐に納まるものだというのがケニアの常識であるからだ。新聞を開けば、政治家や役人の汚職の記事を目にしない日はなく、国民にしてみれば、「税金を増額する前に、まず、汚職問題を撲滅しろ!」と言いたくなるのも当然だ。