食へのたゆまぬ情熱が切り開いた人生
個人が作った調味料がケニアの大手スーパーに並ぶまで

  • 2020/4/8

 健康な食事は、生きるための活力を与えてくれる。美味しい食事であれば、食べること自体が、個の上ない楽しみに変わる。しかし、時には、美味しくない食事が生活の糧(かて)を得るきっかけとなる場合もあるから、人生は分からない。今回は、そんなまずい食事によって人生が変わった一人の女性起業家の半生をご紹介しよう。

「耐え難い給食」が生んだ起業家

 アンザリ・キティさんは、高校時代に毎日食べさせられた給食の味を、今でも苦々しく思い出すという。当時、あまりのひどい味に耐えられなったキティさんは、調味料の自作を繰り返しては、なんとかして給食の味付けを変えようと悪戦苦闘していた。そんなキティさんをいつしか妹や友人も応援するようになり、調味料を分けてほしい、配合を教えてもらえないか、と頼まれることが増えていったという。

 「美味しい料理に懸ける情熱から生まれた調味料が、ビジネスチャンスにつながっていったのです。良質かつ健康的で、味も良いものを多くの人々に食べてほしいという思いが道を切り開いてくれたんですね」と、キティさんは語る。

テイストアフリーク社を創設したアンザリ・キティさん。より良い味を求め、いまなお自社のラボで探求を繰り返している(筆者撮影)

 2014年にテイストアフリーク社(Taste Afrique Limited)を創設したキティさんは、2016年にチブンディロ(Chibundiro)の開発に成功したのを機に、事業に本腰を入れていくことになる。後に同社の目玉商品となるこの調味料こそ、まずい給食の味を何とかして変えようとさまざまなスパイスと野菜を混ぜ合わせては試行錯誤していた日々がその原点にある。チブンディロという名前は、ケニア沿岸部に多く居住するミジケンダ人の民族グループの一つ、チョニイ人の言語で「挽く」という意味だという。

 「私たちの理念は、伝統的かつ革新的な調味料をあらゆる家庭に届けることです。昔ながらの味を守りながらも、伝統を超えた新しい味と言えばいいのでしょうか。それが健康にも良いものであれば、申し分ないですよね」と、キティさんは胸を張る。

 渾身の一品を作り出して事業が軌道に乗ってからも、キティさんたちは味に妥協することなく、日々、新たな製品のレシピを作ってはラボで試作し、改良を加え続けている。野菜やスパイスは契約農家から直接仕入れる一方、卸売りとも連携し、品不足の時でも安定して材料を調達できる体制を整えているのも自慢だ。

 また、機会をつくってコミュニティーを回っては新作のサンプルを配り、住民と一緒に健康的な食事を楽しむよう心掛けているという。

 というのも、同社は顧客からのフィードバックを何より大切にしているからだ。その内容が良いものであっても、そうでなくても、次への参考になるからだ。改良を重ねられたチブンディロは、パワーアップして商品棚に並べられ、着実に増え続ける消費者に届けられている。

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