在日ミャンマー人映像作家、今も刑務所のまま
監督不在のグランプリ受賞

  • 2022/1/31

「日本大使館は動いてくれるだろうか」

 裁判所で会った日、彼の弁護を受けてくれることになった弁護士は、「日本大使館に連絡しますか」と彼に聞いた。すると彼は困ったような表情を浮かべ、私に「日本大使館は助けてくれるだろうか」と尋ねた。これは、ミャンマー国籍の彼が、以前から心配していたことだった。私は「そんなの分わからないだろう。とにかく自分の状況を伝えたほうがいいよ」と主張した。
 彼の悪い予感は的中した。日本人の私の場合は、日本で複数の署名活動が立ち上がり、官房長官や外相が記者会見や国会で対応を問われる事態になり、これまで「太いパイプ」を誇ってきた在ミャンマー日本大使館は丸山市郎大使が先頭に立つ形で、それこそ全力を挙げて救出にあたってくれていたようだ。
 しかし、彼の場合は違った。外務省は、テインダンさんを含め政治犯の解放をミャンマー側に働きかけているとするが、その結果はまだ出ていない。

ライジングサン国際映画祭の会場で、テインダンさんについて知ってもらうための写真を撮る筆者

 クーデター後には、分かっているだけで1万1700人以上の市民が拘束され、今もテインダンさんを含む数千人が拘束中だ。その中で、日本人ということで特別に解放されたのが私だ。頭からは「彼と自分のいったい何が違うのだろう」という考えが離れない。心の奥底でこの世の中の仕組みに納得できない思いが消えない。

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