ミャンマーで巨大地震「支援は軍ではなく国民へ」
3月30日までに約1700人以上が死亡 被害の拡大に募る懸念

  • 2025/3/31

 3月28日、ミャンマー中部でマグニチュード7.7の地震が発生した。ミャンマーを支配する国軍は、3月30日までに約1700人が死亡した、と明らかにしている。しかし、現地では倒壊した建物にまだ多くの人が閉じ込められているとみられ、被害はさらに拡大することが懸念される。

©Maps.interlude / wikimediacommons

「人道支援により軍政を正当化するなかれ」

 タイを拠点に発信されている民主系のメディアのイラワジは、3月29日付の社説で「ミャンマー大地震の被害者である国民に支援を。戦争犯罪者にではなく」と訴えた。

 社説は、巨大地震が襲ったマンダレー、ネピドー、サガインを中心とするミャンマー中部について、「すでに内戦によって荒廃しており、災害対応計画も救援メカニズムも機能しておらず、災害への備えがまったくできていない状態だった」と指摘した。

 ミャンマー軍を率いるミン・アウン・フライン総司令官は非常事態を宣言し、国際支援を求める異例の呼びかけを行った。しかし社説は、「ミャンマー国民が苦しんでいるにも関わらず、軍事政権の戦闘機はサガイン地域とシャン州の民間施設を爆撃し続けている」「その一方で、政権の指導者たちは被災地域で写真撮影をし、空虚なジェスチャーを示した」と、強く批判した。

 社説によると、ミャンマー軍はインターネットへのアクセスを遮断し、ラジオ、テレビなどほぼすべてのメディアを統制しているという。さらに、電力の供給が不安定になっており、人々は災害や救援活動に関する正確な情報を入手することが困難になっている。

 社説は、「ミャンマー軍は被災状況に無関心だが、世界は対応している」としたうえで、「しかし、この支援が実際にどれほど被災者に届くのか」と疑問を呈し、こう訴える。

 「援助国は、軍の支配を回避し、透明性のある形で確実に援助を行わなければならない。人道支援を提供することによって軍事政権が正当化されてはならない。世界は首都ネピドーにいる戦争犯罪者たちではなく、ミャンマーの人々と共に立ち上がるべきである」

タイでは公共建築物のぜい弱性が露呈

 一方、バンコクでは地震により建設中のビルが倒壊し、多くの作業員が3月30日現在も閉じ込められたままになっている。タイの英字紙バンコクポストは、3月29日付の社説でこの問題をとりあげた。

 同紙は、「タイ全土で感じられた地震の影響は、タイには深刻な自然災害に対処する対策や対応策がないことを思い知らされた」と記す。地震が発生した当時、「政府や関係機関の対応は緊急性に欠け、連携も取れていなかった。発災から丸1時間、国民は事態について何も知らされず、ソーシャルメディアの情報に頼らざるを得なかった」という。

 また、倒壊したビルが公的な建物だったことを受け、同紙は「建物の安全性に対する懸念が高まっている」とも指摘し、「税金で建設された公共事業がなぜこれほど脆弱で簡単に倒壊したのか」と強く非難する。そのうえで、「バンコクの建物のうち、耐震設計がなされている建物がどれほどあるのかを調べる必要がある」と指摘している。最後に社説は、「何よりも重要なのは、政府が自然災害や避難のリスクについて市民に教育と準備を促すために取り組まなければならない」と訴えている。

 

(原文)

タイ:

https://www.bangkokpost.com/opinion/opinion/2990242/unprepared-for-disasters

ミャンマー:

https://www.irrawaddy.com/opinion/deliver-earthquake-aid-to-the-myanmar-people-not-the-war-criminals.html

 

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