「ミャンマーは助けを必要としている」
隣国タイの英字紙が問題解決に向けたASEAN諸国の積極的関与を訴え

  • 2021/3/12

 ミャンマーで国軍によるクーデターが発生して1カ月半が経とうとしている。沈黙を守ってきた東南アジア諸国が先月下旬より動きを見せ始めているが、解決に向けた道のりは険しい。2月25日付のタイの英字紙バンコク・ポストは、社説でこの問題を採り上げた。

CDMを呼び掛けるプラカードを手に抗議行動を行う医学部の学生たち(2021年2月21日マンダレーで撮影)(c) AP/アフロ

バンコクでの「密談」

 報道によると、インドネシアのルトノ外相、タイのプラユット首相とドーン首相は2月24日、ミャンマー国軍が全権掌握後に外相に指名したワナ マウン ルウィン氏とミャンマー情勢についてバンコクで会談したという。インドネシアのルノト外相は会談後、「事態の打開に向け、インドネシアがミャンマーの関係者と協議を続ける」と発表した。
 この動きについて、社説は「クーデターから数週間経ち、東南アジア諸国連合(ASEAN)の指導者たちはミャンマーの政情について懸念を表明している。ASEANは“お互いの内政に干渉しない”という原則を掲げているが、沈黙の外交からようやく脱し、危機打開に取り組み始めた」とした上で、「異例なことに、インドネシアのルトノ外相が22日の週の頭にバンコクにやって来たことは、当初、伏せられており、訪問の目的さえ24日の会談の予定が明らかになるまで公表されなかった」と、指摘する。
 ミャンマー国軍が起こしたクーデターに対し、ミャンマーでは市民不服従運動(CDM)が展開されていると同時に、各地で激しい抗議行動が続き、その中で3人の命を奪われた(*編集部注:社説掲載時点の人数。その後、多数の市民が犠牲になっている)。

 こうした状況を受け、インドネシアとシンガポールは、クーデターで深刻な危機にあるミャンマーを救いたいという意思を明確に表明していると社説は伝えている。また、インドネシアのジョコ大統領は、マレーシアのムヒディン首相とともに「この問題について建設的に意見交換し、前進するための現実的な方法」を協議するためにASEAN特別会議を開催することを提案した。ルトノ外相が各国を訪問しているのは、その調整のためだという。しかし、ルトノ外相が提案した「新たな選挙の実施」は、ミャンマー国民の怒りを買う結果となった。彼らはあくまで昨年11月8日に実施された選挙結果を国軍が受け入れることを求めている。
 
 カギ握るタイ政府

 こうしたASEAN諸国のなかで、ミャンマーの隣国であるタイはどうしているのか。社説は、「ミャンマーにもっとも近く、また戦略的にもっとも重要である隣国タイは、ミャンマー問題についてはイニシアチブをとろうとはしていない。おそらく自らも軍部クーデターの過去があるからだろう」と指摘し、次のように述べている。
 「2月1日のクーデターの後、ミャンマー国軍のミン・アウン・フライン将軍はプラユット首相に書簡を送り、国軍を支持するように求めた。プラユット首相がこれに理解を示したことから、タイ政府がミャンマー国軍と手を取り合うという印象を与えてしまった」
 自らの過去と重ねてミャンマー国軍に対し厳しい態度をとれないタイ政府を嘆かわしいと言わんばかりの社説だ。
 その上で、「今回、インドネシア、ミャンマー外相会談がバンコクで行われたことで、タイのイメージの回復につながったかもしれない」と評価し、「タイは特別首脳会談を開催し、ASEAN諸国が互いの国の問題解決に積極的に協力する姿を示さなければならない」と訴える。
 「タイとASEAN諸国は、ミャンマー国軍が民主化路線に戻るように後押しすべきだ。武力を行使しないことが大切だ。ミャンマーは、過去数十年にわたって国際社会から制裁を受け、苦しんできたことを思い起こそう。そして、ミャンマーにもASEAN加盟国としての責任があることを自覚してもらわなければならない」
 民主化に向けて歩み出していたミャンマーが軍事政権に逆戻りすることは、ASEAN全体への信頼にもかかわることであり、これ以上の状況の悪化はなんとしても避けなければならない。そのカギはタイ政府が握っている、と社説は主張している。

 

(原文: https://www.bangkokpost.com/opinion/opinion/2074179/myanmar-needs-help)

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