ミャンマーの若年層を煙草被害から守れ
地元紙が販売者への罰則と子どもたちへの教育訴える

  • 2020/6/8

 喫煙は、喫煙者本人だけでなく、その周囲の人たちへの健康被害も懸念される。健康志向が高まるなか、世界的には「煙草を減らそう」という流れになっているものの、若い世代には誘惑も多い。「世界禁煙デー」の5月31日、ミャンマーの英字紙グローバルニューライトオブミャンマーは、この問題をとりあげた。

ミャンマーでは、喫煙由来とみられる健康被害が深刻化している (c) Gabriel Cote / Unsplash

男性の3割が喫煙

 世界禁煙デーは、1987年に国連の世界保健機関(WHO)によって5月31日と定められ、1988年がその第1回とされた。「以来、30年以上にわたり、喫煙は肺がんを誘発するなど健康に害を与えるものとされてきた。このままタバコの消費量が変わらなければ、がん、高血圧、呼吸系疾病により命を落とす人の数は、今後ますます増えるだろう」と、社説は述べた上で、「毎年、世界で700万人の喫煙者が命を落としている上、89万人が副流煙の影響を受けている」と、指摘する。

 少し古いデータだが、2018年のWHOの発表によると、ミャンマーの男性喫煙率は35.2%であり、当時の日本男性の喫煙率33.7%と比べ、大きな違いがない。ちなみに、同じ東南アジアでも、東ティモールの男性喫煙率は78.1%、インドネシアの男性喫煙率は76.1%と、それぞれ世界で1番目と2番目に高い。

 両国に比べれば、ミャンマーの「男性喫煙率」は、世界64位である。しかし、社説が懸念しているのは、世界ランキングではない。「喫煙によって、ミャンマーで毎年6万人以上が命を奪われている」という事実であり、「喫煙由来とみられる健康被害によって、国の保健財政が圧迫されている」ことへの懸念だ。

増える若者の喫煙

 社説は、「もしわれわれが喫煙をコントロールしなければ、年間予算の半額が予防可能な喫煙由来の病の患者への医療サービスに費やされることになるだろう」との保健スポーツ省の試算を引用しつつ、警告する。

 ミャンマーでは、近年、10代の若者による喫煙が急増しており、出回り始めた電子たばこも人気が高まっている。喫煙習慣のある者に禁煙を促すことはもちろんだが、それと同時に、「喫煙者を増やさない」ことが必要だ、と社説は言う。子どもや若者が喫煙の誘惑に負けない対策を打つ必要がある、ということだ。

 社説は、WHOが子どもたちを煙草業界から守り、煙草を規制する法律を制定するよう各国に求めていることに触れた上で、こう訴える。「子どもたちを守るためには、若年層への煙草の販売行為について罰則を設けて規制しなければならない。だが、最も大事なのは、どんな副作用があるか理解していない危険なものを吸い込むことがどれだけ愚かなことで、依存症に陥るリスクがあることか、若年層自身に理解させることだ」

 社説自体は世界禁煙デーを踏まえて書かれたものだが、地球上のすべての人々が健康と公衆衛生に強い関心を持たざるを得ない今こそ、煙草と健康被害について考える好機だと言えるかもしれない。

(原文:https://www.globalnewlightofmyanmar.com/stop-tobacco-industry-exploitation-of-children-and-young-people/

 

 

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