東南アジアの社説が報じる中国の姿
地域の経済動向と安全保障の面から動向を注視

  • 2022/5/16

 新型コロナ感染拡大からいち早く抜け出したはずの中国の経済が、パンデミックの再来に苦悩している。中国と深い関係にあり、よくも悪くも多大な影響を受ける東南アジア諸国は、その動向を注視する。

大統領選に勝利し、取材に答えるフェルディナンド・マルコス・ジュニア氏(愛称:ボンボン)(フィリピン・マニラで 2022年5月11日撮影)(c) AP/アフロ

パンデミックの再来と経済の減速を伝えるシンガポール

 シンガポールの英字紙「ストレーツタイムズ」は、4月21日付けの社説で「ロックダウンが中国経済にのしかかる」と題してこの問題を採り上げた。
 中国国家統計局は4月18日、今年第1四半期のGDP成長率を4.8%増と発表した。2月に北京五輪を開催するなど、世界にコロナ禍からの順調な回復を示した中国だが、順調だったのは2月までだ、という。
 「中国の第1四半期の経済成長率は、国の目標である4.4%を上回ったが、中国はそのことを手放しで喜んではいない。なぜなら、成長が見られたのは、新型コロナによるロックダウンが相次ぐ前の1月と2月だけだからだ。3月に入ると、小売売上は前年同月に比べ3.5%減少した。製造業は、前年の3月に比べて5%の伸びたものの、1月と2月に前年比7.5%増を記録したことを鑑みれば、伸び幅が落ち込んだ。一方、失業率については、今年3月が5.8%を記録し、国がターゲットとする5.5%を上回った」
 社説は、中国経済がここまで急激に失速した背景として、中国政府による「ゼロコロナ政策」を挙げる。なかでも、経済の中心地である上海で厳しいロックダウンが敷かれたことが大きかった、と同紙は指摘する。
 上海では、3月下旬に1日あたりの新規感染者が1000人を超え、28日からロックダウンが実施された。ゼロコロナ政策に基づくロックダウンは、市民の外出は原則禁止、工場の操業は停止され、企業は在宅勤務だけになる。経済活動が大幅に制限され、中国経済全体の心臓がほぼ機能しない状態に陥ったのだ。その影響が大きいことは、同紙が挙げた3月の経済指標を見てもよくわかる。
 同紙によれば、中国政府はこれ以上の機能停止は中国経済の「生死」に関わる、として、一部制限の緩和に着手したという。
 「輸送トラックを通すため、中国政府は高速道路を一部使用可能にし、取扱量が4割以上激減した港を動かし始めた。また、安全対策などを実施した666工場の稼働を認めた。政府は、マクロ経済の刺激策も検討しているようだが、上海経済を再稼働させなければ、5.5%の成長率を達成することは難しいだろう。中国の経済動向は、対中貿易に依存しているこの地域にも影響を与えるものだ」

フィリピンは現政権の親中姿勢に警鐘

 中国の動向は、経済活動だけでなく、安全保障面でも東南アジアに多大な影響を与える。
 フィリピン政府は4月、中国と領有権を争う南シナ海でのフィリピン独自の油田探査を停止した。4月25日付のフィリピンの英字紙、フィリピンデイリーインクワイアラーは、「中国のいじめに対抗せよ」と題した社説を掲載。もともと中国と近い関係にあるドゥテルテ大統領の弱腰姿勢について、海事専門家らの言葉を引用しつつ、「ドゥテルテ大統領は、また中国の要求に折れた」「中国の思いのままにされている」などと、批判した。
 社説によれば、ドゥテルテ大統領と中国の蜜月は、2016年の就任当時から続いているという。フィリピンは、超法規殺人で麻薬取締に踏み切ったドゥテルテ政権を強く批判したオバマ米大統領との会談を中止するなど、米国に対しては厳しい態度で臨む一方、中国に対しては、南シナ海をめぐるフィリピンに有利な判決さえも棚上げにして多額の援助を取り付けるなど、実利を選ぶ。こうした政権の中国寄りの姿勢が、今、改めて強い批判にさらされているのは、フィリピンが5月に大統領選を控えていたためだ(編集部注:5月9日に投開票が実施された)。
 6年に1度の大統領選では、ドゥテルテ大統領の長女を副大統領候補とする故フェルディナンド・マルコス元大統領の長男フェルディナンド・マルコス・ジュニア元上院議員(愛称ボンボン)が最有力候補とされていたが、投開票の結果、前評判通りボンボン氏が圧勝を収めた。現地では、事実上の「第二次ドゥテルテ政権」と言われており、中国寄りの外交姿勢も継承されるのではないか、と見られている。
 社説は、中国の姿勢を「いじめ」という強い言葉を使って批判した。米国と中国との間で揺れるフィリピンの新政権が、どんな外交政策を選ぶのか、注目される。
 
(原文)
 シンガポール:https://www.straitstimes.com/opinion/st-editorial/the-straits-times-says-lockdowns-weigh-on-china-growth-target

 フィリピン:https://opinion.inquirer.net/152341/stand-up-to-chinas-bullying

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