Z世代が蜂起したバングラデシュとネパールに見る「その後」
政治史上の画期的な成功を収めた若者たち 破壊後の創造に苦悩も

  • 2026/1/28

 バングラデシュで2025年12月12日、ある青年活動家が銃撃された。2024年に全国に広がった学生運動で中心的な役割を担った人物で、12月18日に搬送先のシンガポールで亡くなったが、その後、バングラデシュで激しい抗議行動が起こり、メディアが襲撃される事態となった。世界では2024年から2025年にかけて、背景はそれぞれ異なるものの各地でZ世代と呼ばれる若者たちによる反政府抗議活動が相次いでいたが、なかでも政権交代にまで至ったバングラデシュの情勢については、「その後」が注目されていたなかでの出来事となった。

抗議の声を挙げるネパールのZ世代たち(2025年9月8日撮影) © हिमाल सुवेदी /wikimediacommons

メディアへの襲撃 「知的な基盤への挑戦」と抗議

 襲撃されたメディアの一つ、バングラデシュの英字紙デイリースターは、2025年12月23日付の社説で「暴徒による暴力が増大 沈黙は許されない」と題した記事を掲載した。

 今回の若者たちの抗議行動は、きたる2026年2月に実施される総選挙に立候補する予定だった青年活動家のシャリフ・オスマン・ハディ氏がモスクを出ようとしたところを覆面の犯人に銃撃されたことを受けて広がった。事件後、首都ダッカの広場に多くの若者たちが集まったが、その一部がデイリースター紙やベンガル語メディアのプロトム・アロ紙の事務所に押し入ったという。

 これらのメディアがなぜ襲撃されたのかは明らかになっていない。イギリスの公共放送BBCは、「どちらもハシナ前政権に対して批判的な記事を掲載していた」としたうえで、「ムハマド・ユヌス氏率いる暫定政権の政策についても一部を批判していたため、政権支持者を怒らせたのではないか」と指摘している。

 デイリースター紙は社説で、「今回の攻撃は、バングラデシュの知的な基盤を脅かす組織的なものだった」としたうえで、「法執行機関はほとんど傍観しているだけで、行政は沈黙を守った。民主主義的な価値の回復を約束して立ち上がった政府がこのように職務を放棄することは、道義的に許しがたい」と抗議している。

 さらに、「2024年の民衆の蜂起は権利を確立するためのものであったはずであり、権威主義的な専制を暴徒の暴政で置き換えるためではない」とも訴える。事件の真相はまだ明らかではないが、きたる2月の総選挙を前に、暫定政権は深刻な課題を突き付けられている。

運動の持続と制度化に向けて

 一方、2025年9月にZ世代の抗議活動によって当時の政権が崩壊したネパールでは、抗議行動勃発から100日が過ぎた。これを受け、現地の英語紙カトマンドゥポストは、2025年12月18日付で「Z世代運動の課題を制度化するためには、すべての関係者が柔軟に対応する必要がある」との社説を掲載した。

 ネパールでは、当時の政府がSNSの利用を禁止したことを機に若い世代を中心にした反政府運動が起こり、わずか2日間で当時の政権が倒れた。運動の中心になった若者たちは、その後、元最高裁長官のスシラ・カルキ氏率いる暫定政権にも参画している。

 同紙は社説で、「若者たちは、運動の過程で、腐敗、悪政、縁故主義、不処罰に対する国民の怒りを喚起することに成功した」と評価する。さらに、若者たちの主要団体と政府は12月10日、彼らの行動が正当なものであるとする10項目の合意文書に署名した。「ネパールの政治史における重要な画期的出来事として刻まれる出来事だ」と社説は伝えている。

 他方、社説は「運動を持続させ、その成果を制度化することは容易ではない」とも指摘。若者グループに対し、「実行可能な項目を優先し、他の政治勢力や関係者との合意形成を図るべきだ」と注意喚起する。

                 *

 破壊の後には、創造がなければならない。バングラデシュの若者たちが苦悩しているように、ネパールの若者たちもまた、今後、さまざまな課題に直面するだろう。彼らの「偉業」を持続可能な制度にして改革を実現することは、決して若者たちだけの責務ではないはずだ。

 

(原文)

バングラデシュ:

https://www.thedailystar.net/opinion/editorial/news/we-cant-afford-silence-the-face-growing-mob-violence-4064716

ネパール:

https://kathmandupost.com/editorial/2025/12/18/after-100-days

 

 

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