国際女性デー「女性に平等な機会と安全な環境を」
女性の社会進出の長い道のりを論じるアジアの社説

  • 2025/4/25

 3月8日は国際女性デー。日本を含む世界各地で、「女性」の今を考えるイベントなどが開かれた。新聞各紙も、それぞれの国の女性の社会的地位向上や、ジェンダーをめぐる課題などについて論じた。

フィリピン南部ミンダナオ島のダバオでサリサリストアを営む女性 © Burgermac / wikimediacommons

サリサリストアを通じて社会的な幸福をはぐくむフィリピンの女性

 フィリピンの英字紙、フィリピン・デイリー・インクワイアラーは、3月9日付の社説で同国における女性の社会進出の現状などを論じた。

 社説は、「フィリピンの女性たちは、1800年代に権利が抑圧されていた時代から、“ガラスの天井”を打ち破るまでに長い道のりを歩いてきた」と振り返る。そして、女性の進出における顕著な進歩の一つとして、裁判所の現職判事の56%を女性が占めていること、また、判事だけではなく、弁護士や司法官など司法機関全体で女性が存在感を高めていること、を挙げる。

 さらに社説は、フィリピン開発研究所の調査を紹介し、フィリピンでよく見かける「サリサリストア」の経営や所有が女性たちにとって個性を生かす場となっており、社会的な幸福をはぐくむ基盤となっている、と指摘する。サリサリストアとは、日用品や食品などを自宅の一画などで販売する街角のコンビニエンスストアだ。その経営が、「主婦」という、重要だが報酬を伴わない女性の仕事とは「別のアイデンティティ」を見つけるのに役立っているというのだ。

 社説が引用した統計によると、フィリピンにおける女性の労働参加率は51.2%と、男性の75.4%に比べ低い。しかしその一方で、大学を卒業した女性の割合は14.5%と、男性の10.5%を上回っているうえ、中等教育を修了した女性も84.8%と、男性の81.4%より高い。社説は、「女性が男性と同等の権利を得るだけでなく、男性と同じ機会も保証される方向に向かうことを願っている」と訴えている。

バングラデシュでまん延する女性への性的暴行

 バングラデシュの英字紙デイリースターは、3月8日付で「私たちの民主主義には女性の力が必要だ」と題した社説を掲載し、女性の政界への進出について論じた。

 社説によれば、バングラデシュは政治改革のさなかにあり、新旧政党が国民の支持を集めようと躍起になっているため、「政治情勢は活気付いている」という。その一方で、女性の政治参加の度合いは「非常に低い」ままだ。「政治における男性優位と、ジェンダー差別を解決するための構造改革の欠如」が女性の政界進出を妨げている、と社説は指摘する。

 そのうえで、「バングラデシュでは女性にとって安全ではない環境が生み出されている」とも警鐘を鳴らし、過去5年間で1万2000人近くの女性と少女が暴力に直面し、1089人の女性と少女が性的暴行を受け、207人が暴行後に殺害されたという統計データを示す。さらに、最近ではオンライン上でのセクハラ行為が増加しており、法の執行が不十分で加害者が罪に問われないという認識が広まっていることが「最も憂慮すべきことだ」と社説は言う。

 最後に、「政府は法執行機関を通じて女性が公共の場で安全に過ごせる環境を作り、女性が政治に参加できるように、そして、デモや集会に参加したり、恐れることなく街を歩いたりできるようにしなければならない」と主張している。

 

(原文)

フィリピン:

https://opinion.inquirer.net/181455/big-small-wins-for-women

バングラデシュ:

https://www.thedailystar.net/opinion/editorial/news/our-democracy-needs-women-3842536

 

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