「ガザ地区を引き取る」トランプ米大統領の発言に反発する南アジア
イスラエル・ネタニヤフ首相との会談で「住民180万人を移住させる」との意向を明言

  • 2025/3/14

 トランプ米大統領は2月4日、訪米していたイスラエルのネタニヤフ首相とホワイトハウスで会談した後、記者会見を行い、「パレスチナのガザ地区をアメリカが『引き取る』」と発言した。さらに同氏は、「ガザ地区を再建する間はパレスチナ人住民180万人をガザ域外に移住させる」とも述べた。この発言に対し、南アジアの国々からは強い批判の声が上がっている。
 ロイター通信などによると、トランプ大統領は「パレスチナ人を他のアラブ諸国に移住させ、その間にアメリカが荒廃したパレスチナの領土を引き取って所有し、開発する」と述べたという。

イスラエルのネタニヤフ首相(左)と会談後に記者会見を行ったトランプ米大統領(2025年2月4日撮影)© The White House / Wikimedia commons

スリランカ紙は「非現実的で無謀な中東のリビエラ計画」と批判

 スリランカの英字紙デイリーニューズは、2月13日付で「中東のリビエラ」と題した社説を掲載した。「中東のリビエラ」とは、トランプ大統領がネタニヤフ首相との会見後の記者会見で述べた「計画」の中で、ガザ地区を再開発して「中東のリビエラにする」と言ったことを指している。

 社説は、「これまで提案されたパレスチナ問題の解決策の中で、中東のリビエラ計画は最も非現実的で無謀なものに見える」と批判する。この計画では、ガザ地区からパレスチナ人が立ち退きを迫られ、富裕層向けの保養地に変貌する。その間、パレスチナ人はガザへ戻ることを許されない。

 「これはあらゆる意味で民族浄化に等しく、戦争犯罪である」と、社説は批判する。

 さらに社説は、「この計画が発表されたことが、ハマスとイスラエルの間の脆弱な停戦協定の終焉を告げる鐘となる可能性がある」と懸念する。実際、その指摘は、現実のものとなりつつあり、この社説の最後の一文の指摘も的を射ている。

 「ガザ地区はそこに住むガザの人々の生活と魂であり、外国の億万長者の遊び場になってはならない」

パキスタン紙は「何万人ものパレスチナ人の死体の上に築かれる邪悪な計画」

 パキスタンの英字紙ドーンは、2月7日付の社説で「ガザを観光地として再開発するという計画は、大統領自身の口から直接発表されたものでなければ、あまりにもばかげていて、コメントすることすらばからしい」と、厳しく批判した。

 社説は、「中東のリビエラを建設するというが、そのリビエラは、イスラエルによって殺害された何万人ものパレスチナ人の死体の上に築かれることになる」と記す。

 「パレスチナの人々は、地球上で最も先進的で致命的な兵器に直面しつつ、この邪悪な計画に抵抗し続けるだろう。ガザ地区に対する戦争は、パレスチナの人々の意志は決してくじけないこと、そして、買収や賄賂、暴行によって服従させることはできないことを証明した」と、社説は述べている。

バングラデシュ紙も「控えめに言って言語道断」

 バングラデシュの英字紙デイリースターも、2月7日付の社説で、「ガザはパレスチナの人々にものだ」と主張し、「米国による『占領』はとんでもない考えだ」と述べた。

 社説は今回のトランプ大統領の発案を「現代のホロコーストだ」と指摘し、次のように激しく批判した。

 「もしこの計画が実行に移されれば、まさに国連事務総長が称した通り、ガザ地区における『民族浄化』となるだけでなく、大国が大規模な追放によって領土紛争を解決しようとする、極めて危険な前例を作ることにもなる」「生き残った人々を根こそぎ追いやり、望まない国々に散り散りになるようするなどということは、控え目に言っても言語道断である」

 

(原文)

スリランカ:

https://www.dailynews.lk/2025/02/13/editorial/722389/riviera-of-the-middle-east/

パキスタン:

https://www.dawn.com/news/1890300/depopulating-gaza

https://www.dawn.com/news/1891596/trumps-folly

バングラデシュ:

https://www.thedailystar.net/opinion/editorial/news/gaza-belongs-its-people-3818531

 

 

 

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