コロナ禍による生活の変化とネット社会の弊害
ネパールの社説が精神衛生上の負の影響を指摘

  • 2021/10/14

 インターネットが普及して久しい。それは、先進国のみならず、途上国の人々の生活をも変えた。ネパールの英字紙カトマンドゥ・ポストは、9月22日付の社説でこの話題を採り上げた。

(c) cottonbro /Pexels

ネット利用に潜む「病」

 ネパールにおけるインターネット利用の広がりを、社説はこのように表現する。
 「2000年代のはじめ、私たちはまだ郵便ポストに手紙を入れるのが普通だったし、電子メールを使うことは目新しいことだった。しかし、2000年代も20年が過ぎ、その間の技術の発展は驚くほどだ。モバイルツールはほとんどの人が持っていなかったし、携帯電話は、古めかしい有線電話の代わりとして登場した。それが今や、携帯電話は小さなコンピュータに姿を変え、さまざまな支払いから旅行の予約、教育やエンターテインメントまで幅広く活用されるようになった」
 しかし、この日常生活に浸透したインターネットが魅力的であればあるほど、そこに潜むネガティブな影響もまた、拭い去ることのできないものになりつつある。社説はこの問題をこう指摘する。
 「インターネットの持つ多様な側面から利益を享受しつつも、ネットには<病>が潜む。特に私たちの精神的な健全性にネガティブな影響を与えるものだ」

今こそ見直したい家族の会話

 社説は、新型コロナの感染拡大が、社会の潜在的な問題を浮き彫りにした、と指摘する。
 「新型コロナの感染爆発によって、精神の健全性についての問題が浮き彫りになった。子どもたちは学校に通えなくなり、代わりにインターネットで学習している。子どもたちがネットを見る時間は危険なほど長くなっている。簡単にネットにアクセスできる状況が整えば整うほど、退屈しのぎにソーシャルメディアで時間をつぶすことが増えた。この状況は子どもたちを、情報を一方的に受け取ることに慣れさせ、社会的な認知能力の育成にも影響を与えるだろう」
 こうした状況に対し、社説は「対策が必要だ」と主張する。
 「例えば子どもたちがモバイルフォンやラップトップコンピューターでネットを利用する時間を、一定程度制限することから始めてはどうだろうか。代わりに本を読むよう推奨することで、彼らの創造力が育つよう促すことができるだろう」
 社説はさらに、家族がインターネット情報から切り離されて会話をする大切さを指摘した。
 「新型コロナで家に閉じ込められている今だからこそ、人間同士の会話の魅力を見直すときだろう。<過ぎたるは及ばざるがごとし>の格言の通り、ネット情報に踊らされているリビングルームは、すでにネットの被害を受けていると言える。無意識のうちに画面をスクロールしているような状況に陥ってはならない」
 ネットと子ども。ネットと高齢者。ネットと労働者。新型コロナは私たちがすでに感じていた社会の課題をくっきりと見せつけた。急速にインターネット社会となった途上国では特にその傾向が顕著だ。科学的な技術のみならず、コロナがもたらした新しい生活様式とその在り方について、国際社会が知見を持ちより、経験や情報を共有し合う時期ではないだろうか。

 

(原文https://kathmandupost.com/editorial/2021/09/22/internet-ills)

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