ネパールは「女の子がいらない国」なのか?
「生まれる前からの性差別にピリオドを」と訴える地元紙
- 2020/11/30
「男の赤ちゃんを産むまで許さない」。そんな悪しき伝統に女性たちが苦しんでいる。ネパールの英字紙カトマンドゥ・ポストは11月26日付の社説でこの問題をとり上げた。
2年ごとの出産
社説は、男の子を生むことを求められる女性たちの実例の紹介から始まる。
「35歳のサパナさんは7人の女の子の母親だ。男の子が生まれるまで、と2年ごとに出産してきた。45歳のラルマティ・ダミさんは、妊娠と出産によって健康が著しく損なわれた、と話す。彼女は4人の娘を生み、その後、2人の息子を生んだ」
彼女たちの出身地であるバイタディの保健関係者によると、「男子を生むまで妊娠と出産を繰り返さなくてはならない」というプレッシャーにより、女性たちは身体的にも精神的にも負担を強いられているという。
これはバイタディだけの問題ではない。裕福か貧困か、あるいは学歴が高いか教育を受ける機会に恵まれなかったかによらず、女性に男児の出産を強いる考え方は、ネパールの文化に深く根付いているという。
社説は、「女の赤ちゃんを受け容れない、という心理が働いている」と指摘した上で、次のように述べる。
「結果的に、女性の健康は損なわれるだけでなく、女の赤ちゃんを認めないという有害で古い考え方によって人権も奪われる。妊娠・出産を頻繁に繰り返すことは女性の身体にとって危険であり、貧血や子宮脱を招きやすい、と医師は指摘する」
さらに社説は、ネパールの社会に根深く残る女性差別についても指摘する。
「男の赤ちゃんしか認めないという考え方は、男尊女卑の考え方が根強いこの国に見られる古い考え方の一つだ。例えば伝統的な花嫁の持参金制度などの慣習が残っており、時には女性に対する事件にまで発展することもある。2016年の人権アジアセンターの調査によれば、ネパールは世界で11番目に赤ちゃんの男女比率が歪んでいる、とも指摘された」
歪んだ男女比率
その上で社説は、ある調査結果を基に「歪んだ男女比率」について論を深める。社説によれば、2015年9月から2017年3月までの間にネパールの6つの病院で出産された赤ちゃんの性別を調べたところ、女の赤ちゃんの出生数を100とすれば、男の赤ちゃんの出生数は121だったという。このアンバランスの主な原因は、「男の赤ちゃんなら生みたい」という理由で、女の子を堕胎するケースが続いていることを示している。
「法律が禁止しているにもかかわらず、性別を理由とした堕胎が実施されている。この国における出産前後の性差別は深刻な問題である」
「過去20年の間、ネパールの母親と新生児死亡率は、大きく改善された。社会的にも、女性が政治や経済界に進出しやすくなり、男女の差別をしない政治的、法的改革が実施されてきた。紙の上では、法律は女性を守り、女性の権利を認めている。しかし、現実にはどうだろう。この国は男性たちの保守的なジェンダーに関する考え方、父性社会的な構造により、女性は依然として見下されているのだ」
男の赤ちゃんを求める考え方や、女性に対する数々の犯罪が、ネパールに根付く「父性文化」の副産物であり、社会全体が考え方を変えなくてはならないと主張する。法律を制定し、正しく施行することが女性に対する不必要な偏見や圧力を取り除くために不可欠であることは言うまでもないが、同時に、こうした問題の根が潜む社会への啓発活動も必要だ、と社説は強く訴える。
「私たちは今、動かなくてはならない。女の子が、生まれる前から男の子のために自らを犠牲にするようなことは、終わりにしなくてはならない」
「生まれる前から選別される」。社説の最後の文章に、この問題の理不尽さが言い尽くされている。
(原文: https://kathmandupost.com/editorial/2020/11/26/no-country-for-girl-child)