アメリカとイスラエルがイランを攻撃 前夜の情勢をアジアはどう報じたか
「ルールに基づく世界秩序と、法と秩序を担保する国際機関」に迫る危機

  • 2026/3/8

 今年に入って再開されたイランの核開発をめぐるアメリカとイランの協議は、3回目となった2月26日も隔たりが埋まらず、アメリカは2月28日、イスラエルとともにイランに対して「エピック・フューリー(壮絶な怒り)作戦」を実施した。それに先立ち、緊張が高まっていた情勢を世界はどう見ていたのか、アジアの報道ぶりを振り返る。

攻撃を受けたイラン南部の女子学校で救助にあたる隊員たち(2026年2月28日撮影)(c) Mehr News Agency / wikimedia commons

「湾岸地域は火薬庫」と報じたパキスタン紙

 パキスタンの英字紙ドーンは、軍事攻撃に先立ち、2月22日付で「戦争への道?」と題した社説を掲載した。

 社説は、「湾岸地域の雰囲気はまさに火薬庫のような状況だ」として、緊張がピークに達していることを伝えた。トランプ大統領は交渉が成功する可能性について楽観的だった一方、イランに対しては「攻撃を開始する」と脅迫し、同国の体制転換という選択肢も握っていた。

 社説はイラン指導部がアメリカの軍事的な威嚇について「不必要で非建設的」だとしたうえで、「アメリカの攻撃は地域の戦争を招く」と表明し、「合意の実現に自信を見せている」と報じた。

 さらに社説は、イスラエルについて「戦争計画を画策しており、イランが合意できないような条件を盛り込むようにアメリカに働きかけている」との見方を示した。

 また、「ボールはトランプ氏陣営が握っている。イラン周辺に対して大々的に軍備を増強し、頻繁な脅威表明により、彼は自らを非常に困難な状況に追い込んだ」と指摘。「トランプ大統領は軍事行動が限定的だとしているが、戦況が激化すれば事態は急速にエスカレートする」と述べ、「政治家としての力量を発揮するためには、威嚇的な姿勢を撤回し、イランに真の制裁緩和を与えて疲弊した経済を回復させ、実現可能な核合意でテヘランと折り合いをつける必要がある」と、訴えた。

マレーシア紙は「文明を地政学化する危険性」を指摘

 マレーシアの英字紙ニューストレイツタイムズは、2月19日付で「文明を地政学化する危険性」と題した社説を掲載した。

 社説は、2月14日にミュンヘン安全保障会議で演説したアメリカのルビオ国務長官の言葉を引用し、「この時の演説でアメリカを“欧州の子”と表現したルビオ長官には、ぎくしゃくする欧米関係を安定させようという狙いがあったのではないか」との見方を示す。実際、各紙の報道も、同氏のスピーチについて「欧米関係の改善を目指した内容だった」という見方が目立つ。

 そのうえで、「ルビオ長官は、アメリカと共同で”世界のその他の地域”に対峙する戦争に欧州諸国を巻き込もうとするかのように西洋文化の偉大さを語り、欧米諸国を脅かし、”文明を消滅させようとしている勢力”から守らなければならないと語った」と評した。

 さらに「ルールに基づく世界秩序と、法と秩序を担保する国際機関は、いまや脅威にさらされている」と述べ、「ミュンヘン安全保障会議でのルビオ長官の発言がアメリカ外交政策のシグナルであるとすれば、世界は危険な時代へと突き進んでいる」と指摘。「ベネズエラで何が起きたかを我々はすでに目にした」という表現でアメリカが国力によって物事を成し遂げる現実に言及したうえで、「次はイランだ。テヘランは核開発計画についてアメリカの条件を受け入れるか、政権交代を受け入れるかのどちらかを迫られている」との見方を示した。

 また社説は、ルビオ長官が国際機関や国際的な気候変動対策の枠組みについて「物事を動かすのは国際機関ではなく国家の力だ」と発言したことについても触れ、「明らかに、神話と権力が手を組み、科学を粉々に打ち砕こうとしている」と、強い懸念を示した。

                             *

 残念ながら、事態は両紙の社説の懸念通りに推移している。ルールに基づく秩序が失われ、国際関係を力で変える危険な時代へと突進している世界の行方に危惧が募るばかりだ。

 

(原文)

パキスタン:

https://www.dawn.com/news/1974939/march-to-war

 

マレーシア:

https://www.nst.com.my/opinion/leaders/2026/02/1380600/nst-leader-danger-geopoliticising-civilisations#google_vignette

 

 

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