タイ、第3波下で観光客の受け入れを最終決定
隔離期間を延長しつつ観光立国の復活も目指す

  • 2021/6/27

 新型コロナの感染がいまだ収束の見通しが立たないなか、あまりにも長く停滞する経済の復興を目指し、様々な工夫で一歩を踏み出そうとする国もある。タイもその一つだ。6月7日付のタイの英字紙バンコク・ポストは社説でこの話題を採り上げた。

タイ政府はプーケット島外への移動にあたっての隔離期間を7日から14日に延長した (c) Bao Menglong / Unsplash

サンドボックス計画

 タイでは7月1日から、観光地プーケット島で、一定の条件を満たした外国人旅行客の受け入れを開始する。「プーケット・サンドボックス」と呼ばれる施策だ。「サンドボックス」とは砂場という意味だが、IT用語で「外部から遮断された区域」という意味もあるという。
 タイ国内の新型コロナ感染状況は「第3波」と言われている。5月初めには1日あたりの感染者が9000人を超えるなど急増していたが、6月に入って減少傾向に転じている。とはいえ、一日の新規感染者は2000人台で、変異株による感染も確認されており、油断はできない状況だ。それでもタイ政府はサンドボックスを予定通り実施すると決めた上で、当初計画していたより厳しい条件をつけることにした。社説はこれを好意的に受け止めている。
 「プーケット・サンドボックスは、タイのスポーツ観光省が提案したもので、ワクチンを接種した外国人観光客をプーケットに受け入れることで経済活動の復興を目指す計画だ。これについて、プラユット首相がトップを務める経済状況管理センター(CESA)は6月4日、当初の計画を変更し、ワクチン接種済みの外国人観光客がプーケット島外を観光するための待機期間を7日間から14日間に延長するよう求めた。ビジネス関係者は難色を示したが、結局は14日間で決定した。これは正しい決断だ。なお、14日間の隔離期間中もプーケット島内は自由に動くことができる」

12万人以上の来訪を期待

 社説によれば、外国人旅行者のワクチン接種についても、タイ政府または世界保健機関(WHO)に承認されたもので、少なくとも2週間以上前に接種をすませてなければいけないという条件をつけている。また、当面の間、受け入れは感染リスクが低い国からの旅行者に限定した上で、旅行者は行動を追跡できるアプリをダウンロードし、滞在中、常に起動させておく必要がある。滞在ホテルも、感染予防策など政府に承認された施設に限られる。
 CNNの報道によれば、タイ政府は7月から9月の2カ月間で約12万9000人の観光客を見込んでいるという。また、プーケットの住民の半分がワクチン接種を済ませているとも伝えられている。プーケット島を「安全な場所」として囲い込む準備が着々と進んでいるということだ。
 しかし、感染拡大のさなかにある国としては、難しい決断だっただろう。社説は、「タイ全土で見れば、ワクチンを接種した人はわずか3.5%にとどまっている。米国や欧州では4割から6割の人々が接種を済ませていることを考えれば、タイで感染拡大する可能性はまだ消えていない」とした上で、「他方、旅行者をあまりに長く締め出すことは、観光立国としてのタイの復活を妨げる」と指摘する。
 「感染予防と経済復興のバランスを取らなければならない。これは、大きな賭けだ。自分の健康を危険にさらしてまで新型コロナの感染地を旅行したいという人は少ない。観光の再開は確かに経済復興のために必要だが、賢明な戦略が必要だ」
 ワクチン接種が進む欧米諸国からは、旅行や外食を楽しむ人々の姿が伝えられている。タイ政府の大きな賭けがどのような結果をもたらすか、注目される。
 
(原文:https://www.bangkokpost.com/opinion/opinion/2127875/phuket-curbs-welcome)

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