「タブー」破った米国出身のローマ教皇 アジア諸国の反応は
「アメリカ人教皇」に寄せられる平和への期待
- 2025/6/9
フランシスコ・ローマ教皇死去に伴い行われた新教皇選出選挙(コンクラーベ)で、米国出身のプレボスト枢機卿(教皇名レオ14世)が選出され、史上初のアメリカ人の教皇が誕生した。世界で13億人を超えるとされるカトリック教徒を束ねる新たな教皇について、アジア各地の新聞が社説を掲載した。
アジア出身の教皇は誕生せず
東南アジアの中でもカトリック教徒が多いフィリピンでは、英字紙フィリピン・デイリーインクワイアラーが5月10日付で「レオ14世万歳」と題した社説を掲載した。
今回のコンクラーベは、フィリピン人にとって特別なものであった。フィリピン人のルイス・アントニオ・タグレ枢機卿が教皇候補の一人として注目されていたからだ。「タグレ枢機卿が選出されれば、初のアジア出身教皇、そして初のフィリピン出身教皇となる。その意味が認められることを、多くの人々が望んでいた」と、社説は振り返る。だが、それは実現しなかった。
社説はしかし、「フィリピンがバチカンで強い存在感を示したことは事実だ」と指摘する。また、レオ14世はフィリピン国内でミサを行ったこともあり、「フィリピン人にとってなじみ深い存在だ」と述べ、選出を歓迎している。
新教皇について、社説は「ヨーロッパの教皇支配が何世紀にもわたり続いた後で米国人教皇が選ばれたことを、単なる政治的な人選だと評価するのは不適切だ」と述べ、レオ14世がこれまで貧しい人々に寄り添い、献身的に社会正義を実行してきたことに触れた。さらに、「サンピエトロ大聖堂のバルコニーであいさつに立った際、彼はイタリア語とスペイン語で『皆に平和を』と述べ、英語を一切使わなかった。このことは、フランシスコ前教皇と同様、彼の心が祖国だけでなく、周辺地域の人々にも向けられていることの表れのように思われる」としている。
トランプ大統領とレオ14世
一方、イスラム教徒が多いインドネシアはどう受け止めているのか。ジャカルタ・ポスト紙は5月10日付で、新教皇についての社説を掲載した。
社説は、レオ14世の選出について「アメリカが世界の超大国である限り、アメリカ人がバチカンの最高職に就くべきではないというタブーを破った」と評価。そのことが示す意味について、「彼はこれまでの実績から選出された可能性が高く、これがアメリカの衰退を表しているかどうかは、まだ分からない」と述べるにとどめた。
5月初旬、アメリカのトランプ大統領が教皇に扮した姿をAIで生成してXに投稿し、世界中のカトリック教徒の怒りを買うという出来事があった。その後でアメリカ出身の新教皇が選出されたというわけだが、社説はレオ14世について、「枢機卿時代から、トランプ大統領やバンス副大統領を批判することを決して躊躇しなかった」と述べている。トランプ大統領は、レオ14世の選出について「アメリカにとって名誉なことだ」と発言しているが、今後、トランプ大統領がバチカンの米国人教皇とどのような関係を築いていくのかが注目されている。
一方、社説は、新教皇が直面している課題として、「聖地とウクライナで続く戦争、反移民感情、世界的なキリスト教徒の迫害、多国間主義の終焉」などを挙げる。さらに、「教会内で司祭が関与したとされる性的虐待事件など、未解決の問題もある」とも指摘している。
社説は、「インドネシア、特にカトリックの少数派は、世界とともに教皇レオ14世を歓迎し、教皇が平和と慈善を広め、苦しむすべての人々を支える宗教団体としての教会を導いてくれることに期待している」と述べ、「神のご加護がありますように」と結んでいる。
(原文)
インドネシア:
https://www.thejakartapost.com/opinion/2025/05/10/habemus-papam-americanum.html
フィリピン:
https://opinion.inquirer.net/183115/viva-pope-leo-xiv