コロナ禍で海外からパキスタンへの送金が増加
感染拡大収束後に向けた経済対策を地元紙が指摘
- 2022/1/25
コロナ禍にあって、パキスタンへの海外送金は止まらず、むしろ増えている。その一つの要因は、正規ルートでの送金が増えていることだという。2022年1月18日のパキスタンの英字紙ドーンは、この問題を社説で採り上げた。
前年同期比11%増
パキスタンは、労働力を国外に提供する「送り出し国」だ。そして、海外に住む彼らから送られる送金額は、コロナ下でますます増えているという。
「パキスタン中央銀行の統計によると、国内への海外送金受け入れ額は、2021年7月から12月までに約158億ドルと、前年の同じ時期に比べて11.3%増となっている。多くの人々が、この金額は今年度末までに310億ドルを超えるだろうと見ている」
海外送金が増えることは、パキスタンにとって歓迎すべきことだ、と社説は言う。
「パキスタン経済にとっては、良い兆候だ。なぜなら、海外送金は我が国の最も重要な外貨獲得方法だからだ。貿易よりずっと多く、それが財政や貿易の赤字を埋めている」
社説によれば、パキスタンが2020年度に受け取った海外送金額は294億ドル(約3兆3445億6300万円)に上る。前年の2019年度と比べて27%の増加だ。中央銀行は「これは、インセンティブをつけて非公式送金から正規送金への切り替えを促したキャンペーンや、コロナ禍により、パキスタン国内の親戚や家族への支援金が増えたことが寄与している」と分析する。これを踏まえ、社説は「コロナ禍で国際的な移動が制限されたことや、パキスタン金融当局の作業部会により非公式の送金手段が禁止されたこと、そしてルピー安など、複数の要因が影響し、海外に住むパキスタン人が正規ルートで送金をするようになった」との見方を示している。
コロナ後は減少か
社説によれば、最近はドバイからの非公式な送金の手数料が上がったため、正規ルートでの送金が増えているという。しかしながら、こうした海外送金額の増加傾向は長くは続かないと考える人も少なくない。「それでも依然として多額の資金が非公式な方法によって送金されているという事実がある」ためだ。また、今でもサウジアラビアとUAEが送金元のトップ2であることに変わりはないが、多くの資金が米国や英国、そして他の西欧諸国で暮らすパキスタン人から送られているため、サウジアラビアとUAEからの送金額は伸びていないという。
とはいえ社説は、新型コロナの感染拡大が収まり自由に移動ができるようになれば、こうした送金の構造が変化し、海外送金額が減少する可能性があるとの見方を示す。
「わずかでも送金額が減少すれば、パキスタン経済は打撃を受けるだろう。政府が海外送金を維持するための方策をとらない限り、財政状態の悪化は避けられない」と、社説は指摘している。
(原文:https://www.dawn.com/news/1670105/remittances-growth)