【ウクライナギャラリー】リウネの思い出

  • 2022/3/5

 2014年のウクライナ騒乱から始まったロシアとウクライナの間の一連の関係悪化は、ドンパス戦争とクリミア併合を経て、ついに戦争となってしまった。日々の悲しい報道を見聞きしながら、8年前にウクライナを旅して出会ったの人々の顔が次々に脳裏によみがえる。            

      ⁂ 

 コロナ渦がなければ、ウクライナは観光で訪れて楽しめる国だったはずだ。首都キーウ(キエフ)には、「ペチェルーシク大修道院」という1000年の長きにわたる歴史を誇る世界遺産があるうえ、SNSで知られるようになった「恋のトンネル」という、森の中を線路が続く新参の観光地もある。日本人は短期滞在であれば基本的にビザが不要で、物価も安く、気軽にヨーロッパの雰囲気と旧共産主義体制時代の雰囲気を味わえる国だった。

 2013年の夏、筆者は何となく、「恋のトンネル」を自分の目で見たくなった。キーウ(キエフ)から電車急行に乗って5時間あまりで、最寄りの都市、リウネに到着した。宿に荷物を置いて散歩してみた。目抜き通りの両側に古風な建物が並び、古いトロリーバスが走っていた。

(筆者撮影)

 翌朝は、まず市場を訪れた。スーパーや市場では、街の普段着の姿を見ることができる。

(筆者撮影)

 夏のウクライナは実りの季節だ。店頭には、かあちゃんたちが家で作ってきた農作物やヨーグルトがところ狭しと並んでいる。

(筆者撮影)

 カメラを向けると、「みんなで撮って」と、3人の母ちゃんたちが笑顔でフレームに収まった。

                                                                                                     (筆者撮影)

  「恋のトンネル」への小さな旅を始める前に、駅前のキオスクに立ち寄ってみると、小さい窓から優しそうな店主が顔をのぞかせた。

                                                                                                     (筆者撮影)

 また、この時期は想像以上に気温が高いため、冷たい飲み物が売れるらしく、冷蔵庫が並んでいた。

                                                                                                       (筆者撮影)

 駅前からマルシュルートカと呼ばれるミニバスに揺られること約30分。クレーヴェンという小さな街に着いた。

 時おりすれ違う街の人々に道を尋ねながら、路地の奥にある「恋のトンネル」に辿り着いた。森の中に、線路の幅だけ申し合わせたかのように木が避けて生えているようだ。

 散策していると、トンネルの向こうからカップルが歩いてきた。キーウ(キエフ)からドライブしてきたと話す2人は、その愛を見せつけてくれた。

(筆者撮影)

 当時のウクライナは、平和そのものだった。季節が夏だったこともあり、地方の街にはゆっくりとした時間が流れていた。

 国は貧乏で、西洋のような繁栄を手にしてるわけではなかったが、こういう何気ない時間こそが、歴史に翻弄されてきたウクライナの人々が、つかの間、手に入れた小さな幸せだったのかもしれない。

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