シンガポールの英字紙が苦難の2020年を振り返る
さらに厳しい一年に向けて多国間協力の必要性を強調

  • 2021/1/6

 シンガポールの英字紙ストレーツタイムズの社説は2020年12月31日付で新型コロナを軸に去り行く年を振り返るとともに、これからについて展望した。

あああああああ(c) Victor He /Unsplash

新型コロナがもたらした変化

 シンガポールの2020年12月30日までの感染者は5万8,000人以上、死者29人である。しかし、4月下旬に一日の新規感染者が1500人近くにのぼったのをピークに、感染状況は徐々に抑え込まれ、12月下旬には連日、一桁、あるいは十数人の新規感染者にとどまっている。

 これを受け、シンガポール政府は1月から入国制限を緩和し、人数を制限したうえでビジネス旅行者などの受け入れを始めるという。しかし、英国で確認された変異種の感染拡大も懸念されており、事態は流動的だ。

 それでも、感染者が増大し続ける国々にくらべ、シンガポール国内には落ち着いた空気が漂う。社説はこのように一年を振り返った。

 「新型コロナウイルスの感染拡大によって社会や経済が多大な影響を受け、仕事や人間関係やビジネスが大きく変化した2020年が終わった。新型コロナは、幸福や安全についての感覚を変え、働き方を変え、一人ひとりが、あるいは社会そのものが期待したり、当たり前だと思っていたりしたことを変えた」

 経済への影響も甚大だった。

 「新型コロナが経済にどんな影響を与えたのか計り知れない。パンデミックは、政府に好ましくない政策選択を迫った。経済への打撃を最小限にするためにとった施策は、チェックの行き届かない人々に感染を広げ、結果的に保健当局の負担を増大させた。一方で、経済の減速を覚悟したうえで感染拡大防止を優先させ、隔離措置やマスク、ソーシャルディスタンスなどを導入した結果、経済はここ100年で最悪の落ち込みとなり、失業率は歴史的な高さとなった。新型コロナがもたらしたヘルス・クライシスは、需要と供給のバランスを予期せぬ状況で無残にも破壊した」

「価値ある試練」

 しかし、そんな2020年も終わりを迎え、世界には一つの基準が誕生したと社説は言う。

 「特筆すべきは、仕事と経済を守るために、政府が対策の改善に着手したことだ。どの程度成功しているかは対策によって違うが、このような危機的状況下では、政府の役割のみならず、多国間の協力が経済活動にとって重要であることが強調された」

 社説は、こうした多国間の協力枠組みが、今後の新型コロナ対策にとっても重要だと説く。

 「多国間協力の必要性は、ワクチンが入手可能になった今も同じだ。ワクチンのサプライチェーン、データ、情報の共有が健康な社会を再建するためにとても重要なことだ」

 さらに社説は、市民社会の成長にも言及し、極限の状況で互いを助け合うという精神が自然に発生した、と述べる。

 「国民もまた、彼らの役割を果たし続けなければならない。恵まれない人々を助けるための自発的な活動も始まり、市民社会の成長を証明している。2020年は最悪の一年であったが、人間に耐える力を試すという価値のある試練を与えてくれた。社会は2020年が終わることを喜ぶだろうが、2021年の取り組みは決して簡単なことではない」

 一年が終わっても、新型コロナに終息は見えない。「より困難な一年。忍耐力をもって臨め」と、社説は国民に語り掛けている。

 

(原文: https://www.straitstimes.com/opinion/st-editorial/a-no-less-challenging-year-ahead)

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