バングラデシュの環境対策に適正な予算配分を
国民の生命を守らない政府の姿勢を地元紙が批判
- 2021/6/29
環境問題が、グローバルイシューの中心に据えられて久しい。国連が2015年に定めた持続可能な開発目標(SDGs)の中にも、環境に関する項目がある。しかし、経済発展の途上にある国々では、環境問題は必ずしも優先順位の高いテーマではない。6月7日のバングラデシュの英字紙デイリースターは、社説でこの問題を採り上げた。
前年度を下回る予算配分
バングラデシュの2021年度国家予算における環境関連の予算は前年を下回った。社説は、「環境森林気候変動省にわずか122億タカ(約160億円)しか予算配分されなかったことは残念だ。しかも、気候変動対策の38億タカ(約49億円)を入れてこの金額である。私たちは気候変動を含むさまざまな環境問題に懸命に取り組んでいるというのに、国家の予算配分が前年度を下回っているとはまったく理解できない」と、批判する。
さらに、政府が環境問題を重視していないことは財務大臣の説明からも明らかだ、として、次のように述べる。「実際、国会で予算の提案説明をする財務大臣からは、環境問題に関する発言はほとんど聞かれなかった。大臣は、大気を分析するために24時間体制で大気汚染をモニターする監視拠点を全国16カ所に設置すると発言するにとどまった。大気汚染対策はもちろん重要だが、分析し、大気汚染が進んでいた場合にどうするのか、言及しなかったのだ。さらに大臣は、水質汚染や水不足、生物多様性や森林問題、漁業や河川などによる土地の浸食、再生可能エネルギー、マングローブ林の保護などにも触れなかった。環境保護を国家政策として重視していない印象を受ける」
気候変動の影響を最も受ける国
バングラデシュは、気候変動による影響を最も強く受ける国の一つだと言われる。サイクロンや大規模洪水によって毎年のように甚大な被害を受け、土地の浸食や生態系の破壊も進む。にも関わらず、環境対策が政策の上位に置かれないのは、「国民の生命と財産を守る」という国家の役割を果たしていないことになる。
社説は、「政府も何もしてこなかったわけではなく、バングラデシュ気候変動基金を設置し、国連の気候変動枠組条約に基づいて活動計画を採択した。気候変動アクションプランや災害マネジメント法も制定した」とした上で、「残念ながら、いずれも必要にして十分な予算が配分されておらず、政策を実現するに至っていない」と指摘する。
「この機会に、環境問題に対してより手厚い予算配分を求めたい。そうすれば、行政当局は迅速に環境破壊を食い止める手段をとることができる。もちろん、予算がきちんと執行されているかどうかモニターすることも忘れてはならない」
気候変動という言葉が使われるようになるずっと前から、バングラデシュでは多くの生命が自然災害によって奪われてきた。人間が自然破壊と真摯に向き合うようになった今こそ、一人でも多くの命を守る持続的な方法を考えなくてはならない。
(原文:https://www.thedailystar.net/editorial/news/budget-ignoring-environmental-concerns-2106137)