英米軍がフーシ派を攻撃 「長く醜い戦争」の始まりか
ハマスへの連帯に空爆で応じた軍事行動を南アジアはどう報じたか
- 2024/2/24
中東イエメンの反政府組織「フーシ派」が実効支配する地域で、2024年1月11日、米英軍がフーシ派の拠点を空爆した。フーシ派は2023年10月にイスラエルとハマスが戦闘を開始して以来、ハマスとの「連帯」を掲げて紅海を航行する船舶への攻撃を繰り返している。

イスラエルとハマスとの紛争が続く中、イエメンのサナアで開かれた、ガザ地区のパレスチナ人への支持を示す集会。プラカードを掲げるフーシ派支持者らの中には、ロケットランチャーのレプリカを手に持った子どももいる。(2024年2月9日撮影) (c) ロイター/アフロ
パキスタンは「最強の軍事大国が最貧国の民兵を攻撃」と非難
パキスタンの英字紙ドーンは2024年1月13日、「イエメンへの攻撃」と題した社説を掲載した。
社説は冒頭で、「紅海の状況は以前から爆発寸前の状態にあった。1月11日に英米軍が攻撃したことで、長く醜い戦争の最初の一発が発射されたと言えるだろう」との見方を示した。また、フーシ派が紅海で船舶への攻撃を行ったことについては、「多くの大手企業が紅海からの撤退を決めるなど、世界の海運業界に衝撃を与えた」と、事の重大さを指摘した。
その一方で、社説は「海上ルートの封鎖は問題だが、フーシ派は、ガザへの攻撃が終結すれば行動を停止すると述べている」としたうえで、こう続けた。「にも関わらず、米国はイスラエルに殺戮をやめるよう迫るかわりに、醜い軍事力を誇示した。世界最強の軍事大国が、世界で最も貧しい国家の一つに属する民兵に武力で対抗したのだ。これから先に起こることは、誰も予想できない未知の世界である」
米英の「責任ある行動」を求めるバングラデシュ
バングラデシュの英字紙デイリースターは、2024年1月14日付で「紅海の緊張をエスカレートさせるな」と題した社説を掲載した。
社説は、「我々は、米国と英国がフーシ派の施設を空爆したことで緊張が急激に高まっていることを非常に懸念している」と述べた。また、フーシ派による紅海での攻撃を非難する一方、米英軍には「責任ある行動」を期待している、と表明した。
そして、今回フーシ派が行動を起こした理由は、「米国や英国などの援助を受けたイスラエルが、パレスチナ人に凄まじい攻撃を続けているため」だとし、「米英がイスラエルに武器や外交支援をしながら、フーシ派攻撃のためにイエメンを空爆することは、2万人以上のパレスチナ民間人の死につながっている。嘆かわしい事態だ」と訴えた。
イランと関係を維持するインドの独自路線とは
いまだ表立った行動に出ていないものの、イスラエルとハマスの武力衝突が発生して以来、その動向が注目され続けている国がある。イランだ。ハマスやフーシ派は、イランの支援を受ける「親イラン組織」だと言われている。
2024年1月16日付のインドの英字メディア、タイムズ・オブ・インディアの社説は、イランとインドとの関係の変化について触れており、興味深い。
インドのジャイシャンカール外相は1月15日にイランを訪問し、アブドゥラヒャーン外相らと会談した。この会談で両国はインフラ協力などについて議論しており、「イランにおけるインドの利益復活に意欲を示している」と、社説は読み解く。しかし、その一方で、「フーシ派による紅海航路の寸断を背景に、ニューデリーとテヘランの関係はすでに厄介な水域に入っている」と解説する。
そのうえで社説は、インドが進むべき独自路線について、「ガザ問題やフーシ派の攻撃などで世界が分断されている今、インドが確立できるのは、“断層線のナビゲーター” としての立ち位置だ」との見解を示し、次のように続ける。
「インドは、一方でイランの“抵抗の枢軸”に、他方で米国・イスラエル・アラブとのパートナシップに狭まれている。サウジアラビアとイランは2023年、中国の仲介で合意に至ったものの、ガザの情勢やフーシ派の活動は、両国の距離が依然として遠いことを示している」
そのうえで、「イランは長年にわたり制裁を受けており、中国やロシアとの関係に縛られているが、インドというナビゲーターを得ることで外交上のバランスを得ようとしている」と、社説は指摘している。
(原文)
パキスタン:
https://www.dawn.com/news/1805473/attack-on-yemen
インド:
バングラデシュ:
https://www.thedailystar.net/opinion/editorial/news/stop-escalating-red-sea-tensions-3519066