「アフター・コロナ」へのまなざし
自給自足経済を築く取り組み訴えるスリランカの英字紙
- 2020/4/9
スリランカ政府は4月、「サウバギャ(繁栄)計画」を開始した。スリランカの報道によると、これは100万世帯にトウガラシやオクラの種を配ることなどを含む農業振興策だ。新型コロナウイルス(COVID-19)の感染は同国でも広がっており、政府は医療や公衆衛生面での難題に取り組んでいるが、同国の英字紙デイリーニューズは、4月6日付の社説でこの話題を採り上げ、「COVID-19の脅威にさらされていても、経済発展のための取り組みは続いている」として、長期的な視野も持つことの大切さを説いている。
1年以上続くと予想されるCOVID-19の余波
社説は、「世界的なCOVID-19の感染爆発によって私たちの経済は大きく揺らぎ、平穏な生活や経済活動は甚大な妨害を受けることになった」とした上で、サウバギャ計画について、「そうした中でこの計画が始まったことは、実にタイミングが良い」「農業をはじめ、製造業など他の産業セクターも打ちのめされ、“回復”どころか、ゼロからの再構築を迫られることになることが確実な状況下で、国内で食品が増産されることは、貿易赤字の軽減にもつながるだろう」と、解説している。
さらに社説は、「コロナ禍」の影響は1年あまりも長引くだろう、との見通しを示す。「このコロナ禍の後、政府は、消費力の大きな落ち込みという長期的な課題に直面するだろう。(2019年4月に起きた)イースターの連続爆破事件でさえ、その衝撃は驚くほど速く消え去り、一時落ち込んだ観光産業は、1カ月の間に回復。1年のうちには完全に元に戻った。しかし、COVID-19の余波は、今後少なくとも1年、あるいはもっと長く続くだろう」
イースターの連続爆破とは、最大都市コロンボなど国内8カ所で昨年4月、教会や高級ホテルが爆破テロに襲われ、259人が死亡した事件のことを指す。犠牲者には外国人や子どもも含まれ、8件のうち6件は自爆テロだったという。社説は、この衝撃的な事件より、今回のコロナ禍の方が、社会や経済を深く長く傷つけるだろう、と予測しているのだ。
1970年代の試みがモデル
その上で、社説は人々に呼びかける。「これから起きるさまざまな経済の混乱に対し、私たちも一市民として、努力をしなくてはならない。政府や医療関係者がコロナと闘っているのだから、私たちも、これまで築いてきた経済を維持し、できるだけこれまで通りの生活を続けられるように努力しなくてはならない」。
そして、サウバギャ計画は、国民による努力の一つとして有効な取り組みになる、との見方を示し、政府が1970年から77年にかけて家庭菜園で大規模な自給自足を呼びかけた政策に言及しつつ、次のように述べる。
「モデルとなるのは、輸入食品に頼らない社会を築くことを目指して行われた家庭菜園での自給自足だ。今回のサウバギャ計画では、1パック20スリランカ・ルピー(約112円)の野菜などの種子が販売され、家庭菜園での栽培が奨励されている」「当時の取り組みは、開発途上国として貧困に打ち勝つための自給自足策だったが、中位所得国となった今日、われわれは感染爆発による経済不況からの回復という課題に直面している。1970年代の取り組みは成功した。今回も、COVID-19 との闘いに打ち勝たなくてはならない」
COVID-19の感染は今も世界各地で広がり続け、終息の気配を見せない。それでも、「アフター・コロナ」の視点を持ち、覚悟と準備をすることが必要だ、と社説は主張している。
(原文:http://www.dailynews.lk/2020/04/06/editorial/215923/building-economic-self-sufficiency)