新型コロナの第3波襲来でビジネスが瀕死状態のスリランカ
地元紙が金融機関の姿勢を批判

  • 2021/6/6

 新型コロナの感染拡大が始まって1年以上が経過した今、さまざまな変異株が新たな脅威となり、世界を不安に陥れている。長引くコロナ禍に経済は打撃を受け、貧困層の人々は文字通り生きる糧を失っている。5月29日付けのスリランカの英字紙デイリーニューズは、この問題を採り上げた。

スリランカは新型コロナの第三波に見舞われている (c) sk /Unsplash

急激な感染者増

 スリランカの新型コロナ感染者は、5月下旬現在、累計約17万8000人に上り、1363人が亡くなっている。一時は一日あたりの新規感染者が10人未満の日々が続いていた同国だが、5月に入ってから第3波が襲来し、感染者は急激に増加。5月25日には1日あたり2700人以上の新規感染者が確認された。

 この事態を受け、スリランカではコロナ禍の影響を受けた人々への新たな支援策が打ち出されている。これについて、社説は「新型コロナの感染予防のためにロックダウンや行動制限を余儀なくされた企業や個人に対して政府が打ち出した新たな支援策は、希望をもたらし、やる気を起こさせるものだ」と、評価する。

 さらに社説は、「ゴーターバヤ・ラージャパクサ大統領が中央銀行とその他の金融機関に対し、第3波で苦しむ企業や個人の支払いを猶予するよう指示するとともに、民間の貸付会社にも感染状況が落ち着くまでは借金返済の催促をやめるよう要請した」と報じている。

 他方、社説は、昨年の第1波の際も大統領が同様の要請をしたにも関わらず、ほとんど効き目がなかった、とも指摘する。「1年前に大統領の要請がどれぐらい効果を挙げたかは不明である。人々からは、大統領の要請を真剣に聞き入れず、すぐに全額返済を求めた金融機関が数多くあった、という不満が寄せられた」

 その上で社説は、このような金融機関の姿勢は政府の支援策の目的に合致しない、と批判する。

 「借入ができても、一括返済を求められたり、猶予が短期間だったりしたら、新型コロナで苦境に立たされた人たちにとって何の助けにもならない。彼らはいわば、フライパンから火の中に落ちてお金を稼ぐこともできない状況であり、“時を止めること”が必要だ。それはすなわち、ビジネスが元に戻るまで借入金の返済義務が一定期間凍結されるということだ」

これまでとは違うフェーズに

 その上で社説は、従来に比べて感染力が強い今回の第3波では、ビジネス支援も新たなフェーズに入ったと指摘する。

 「第3波を受け、ビジネスマンやビジネスセクターの苦境は倍増した。第1波で借入金の返済猶予を要請した時には、ビジネス自体が崩壊するほどの危機には至っていなかったが、それから1年が経った今、ロックダウンや行動制限もあいまって、ビジネスは完全に先行きが見えなくなった」

 また、このような危機にかかわらず、国民の理解と協力が得られていないと厳しく指摘し、「現在、感染拡大防止のために厳しいロックダウンが行われているが、その最中もたった1日で500人以上が帰省に従わず逮捕された。政府が、当初予定されていた一時休止期間を設けることなくロックダウンを継続する可能性を示唆しているのもやむを得ない」と、述べる。

 「十分な数のワクチンを入手し、集団免疫を獲得するまで、政府が採りうる感染防止策はロックダウンしかないというのが実態だ。それは、国民にとっても経済にとっても、大変な困難を伴うことであることは間違いない。しかし、実際のところ、今はロックダウン以外に方法がない。この状況に立ち向かうため、政府は新たな戦略を打ち出し、経済と国民の生活へのダメージを最小限に抑えなければならない」

 スリランカで感染が急激に拡大している背景には、感染力の強いインド型変異株の影響も多いにあり得る。だからこそ、抑制は簡単ではない。「これまでとは違う」という意識の転換が、政府にも国民にも求められているようだ。

 

(原文:http://www.dailynews.lk/2021/05/29/editorial/250336/looking-options)

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