スリランカが正月休みを前に感染拡大を警戒
- 2021/4/22
新型コロナの感染者数が累計で9万人を超えたスリランカ。新規感染者数は減少傾向にあるものの、たくさんの人が寺院などに集まる祝日の様子をみると、感染の再拡大が懸念されるという。3月30日付のスリランカの英字紙デイリーニューズは、社説でこの問題を採り上げた。
「忘れっぽい人々」
「スリランカの人々は忘れっぽい」。
この日の社説は、こんな書き出しで始まる。例えば、爆弾テロで大きな被害が出て、警戒心を持って行動するようになっても、しばらくすると人々は忘れられてしまった、という。そして今、社説が一人一人のコロナ対策についても同様だと指摘する。スリランカでは、毎月、満月の日を「ポーヤデイ」として祝う習慣がある。3月の満月は28日だった。そして、続く4月は、7日にポーヤデイを控えているうえ、12日には、シンハラ人とタミル人の大晦日、そして13日が元日と、重要な祝日が続く。社説は、3月のポーヤデイについて、「国内の寺院にはどこも人々が押し寄せ、コロナ対策は行われていなかった。多くの生命を奪ったコロナウイルスのことなど過去のことのように、マスクの着用やソーシャルディスタンスの確保すら守っていない人たちが大勢いた」と嘆く。
スリランカでは、新型コロナ感染者が累計で約9万3,000人に上る。1日あたりの新規感染者は、4月初旬は200人前後だが、わずか2カ月前の2月には、1日あたり700人以上に上っていた。少しずつ減少しつつあるとはいえ、いまだ抑制に成功したとは言えない状態だ。
さらに社説は、スリランカ国民の「忘れっぽさ」を次のように描写する。
「公共バスの車内は、以前と同じ満員状態に戻ってしまった。乗客数を座席数に制限するためにバス会社に補償金が支払われているというのに、このありさまだ。ワクチン接種が開始され、警戒心が緩んでいるのだろうが、それは誤りだ。医療関係者によれば、ワクチン接種後もマスクなどの予防策は必要だ」
正月休みはロックダウンを
こうした状況を受け、国内の専門家からは次のような警戒の声が上がっている。
「疫学者のサマラウィーラ博士によれば、ウイルスは私たちの社会に確かに存在しており、宗教行事やショッピングなどで人々が集まる状態は、明らかに望ましくないという。博士は、ポーヤデイにスリランカ全土で集会が行われたことを深く憂慮し、感染の再拡大が起きる可能性がある警告している。マスクの着用や1メートル以上のソーシャルディスタンス確保、手指の洗浄と消毒は不可欠だ」
特に懸念されるのは、4月半ばに迫っているシンハラとタミルの新年の休日だ。社説は、昨年のクリスマスの休暇の際、首都コロンボがロックダウンを実施しなかったために感染者が急増した、と指摘している。
「キリスト教徒は人口のわずか7%だが、クリスマスに行動制限を緩和し感染拡大が起きた以上、人口の75%が関係する祭日に何の対策も打たなければ、どんな惨事が起きるかは明白だ」
4月の正月休みのシーズンは多くの人が里帰りするため、都市部ではなく、地方の農村部で感染が広がる可能性があり、地方のぜい弱な医療態勢が深刻な打撃を受けるだろう、と社説は危惧し、「感染の第3波を避けるためには、厳しいロックダウンとイベントの禁止が必要だ」と訴えている。
出稼ぎ労働者が多い途上国にとって、「正月休み」は最も重要な連休だ。しかし、カンボジアでは、正月休みを延期して感染拡大を防いだ。新型コロナは前例のない感染症であり、人類もまた、前例のない方法で立ち向かっていくしかない。
(原文:http://www.dailynews.lk/2021/03/30/editorial/245273/avoiding-another-surge)