タイがカーボンニュートラルの計画を策定
原発と水力以外の再生可能エネルギーの供給引き上げを主張

  • 2021/6/4

 地球規模の気候変動への対策として注目されるカーボンニュートラル(温室効果化ガス実質ゼロ)の動きは、国家政策や産業界で優先課題となりつつある。5月28日付のタイの英字紙バンコク・ポストは、社説でこの問題を採り上げた。

Kervin Edward Lara (c) Pexels

歴史的な判決

 オランダのハーグ地方裁判所は5月26日、欧州石油最大手の英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルに対し、2030年までに二酸化炭素の純排出量を2019年比で45%削減するように命じた。これに対し、シェルの広報担当者は「2050年までに実質ゼロ排出のエネルギー企業になるよう努力を加速している」と述べ、控訴する方針を示した。
 社説はこの判決を「企業に対し、2015年の気候変動抑制に関するパリ協定と足並みをそろえるように命じた歴史的な判決」だと評価する。
 「この判決は、世界のエネルギー政策に変化の時が来たことを告げるものだ。化石燃料の時代は間もなく終わり、炭素の抑制や排除に向け、新たな道が開けている。国策もエネルギー開発も、太陽光や風力、バイオマス、原子力、水力といったクリーンエネルギーを使う方向へとシフトしなければならない」
 その上で社説は「タイ政府も変化しようとしている」という。タイ政府は4月、カーボンニュートラルを実現するためのマスタープランを策定し、2037年までに再生可能エネルギーの供給を14%から20%まで引き上げることを宣言した。今年11月に開かれるスコットランドのグラスゴーで開かれる国連の気候変動会議(COP26)に提出される予定だという。この計画について、社説は「日本や米国など経済先進国は2040年までにカーボンニュートラルを実現することを目指しており、中国も2060年までという目標を掲げている。それに比べれば、タイの目標は低いものだ」と、指摘する。

原子力と水力はクリーンではない?

 また社説は、このプランの策定に携わったエネルギー庁高官の一人が「タイ政府は石炭火力発電所をこれ以上建設すべきではない。その代わり、再生可能エネルギーの生産、太陽光、風力、バイオマス、原子力、水力を利用した発電を推進すべきだ」と主張していることを指摘し、その一部に「異議」を申し立てている。

 「水力発電はクリーンだと言われているが、実は環境に負荷をかけると批判されている。例えば、メコン川に建設されているダムのほとんどは下流域に建設され、タイに電力を供給している。また、原子力発電は、日本で東日本大震災後に福島第一原発で事故が発生して以来、国内での計画が中止されており、それを覆すべきではない。原子力発電には、高い安全性と、放射性廃棄物の処置に関する明確な説明が必要であり、今のタイ政府には到底、達成できない」「再生可能エネルギーの中でも、太陽光と風力発電は黄金期に達している。タイはこれらを活用してカーボンニュートラルな社会の実現を目指すべきだ」
 この社説を読めば、タイの原子力政策に東日本大震災の経験がいかに大きな影響を与えているかが明確だ。甚大な犠牲を払い、世界に気づきを与えた原発事故を経験した日本が、今なお原子力政策の見直しの先頭に立っていない事実が、いずれ日本という国への評価にも影響してくるかもしれない。

 

(原文:https://www.bangkokpost.com/opinion/opinion/2122807/renewables-are-the-future)

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