新型コロナウィルスの感染拡大受け対応迫られるタイ
政府幹部の認識の甘さを地元英字紙が糾弾

  • 2020/1/31

中国を中心に、世界各地で感染が広がっている新型コロナウイルス。タイでは、1月28日までに14人の感染が確認された。その数は、今後も増えるものと見られる。29日付のバンコク・ポスト紙は社説でこの問題を採り上げ、政府の対応の甘さを強く批判している。

タイの首都バンコクにあるデパートで店頭にあるマスクをさらに買い求めるマスク姿の中国人観光客ら(2020年1月30日撮影) (c) ロイター/アフロ

感染者は14人だが……

 新型コロナウイルスによる肺炎は、1月初めに中国・湖北省武漢で発生が報道されて以来、急速な勢いで広がり、世界的な流行を見せている。タイで28日までに感染が確認された14人のうち、13人が中国人旅行者で、1人が武漢への渡航歴があるタイ人だという。死者は出ていない。

 バンコク・ポスト紙は、タイ政府の新型コロナウイルス対策について、強い危機感を募らせる。「政府がこれまでにしたことはすべて、何の役にも立たないどころか、かえって混乱を招いている。どれだけ深刻にとらえているのか、果たして拡散を抑え込むことができるのか、疑問に思わざるを得ない」

 例えば、タイのプラユット・チャンオチャ首相は1月27日、テレビで国民に政府の対策を説明したが、それについて同紙は、「遅すぎるし、対応が弱すぎる」と非難する。例えば、首相が「状況は100%抑制可能である」と述べたことについては、「これでは国民に、すでに感染拡大が制圧されたかのような誤解を与える」と指摘する。「実際には感染者は急増しており、今後、さらに増えたとしても何の不思議もない」

 バンコク・ポスト紙が強い危機感を示している理由の一つに、新型コロナウイルスは発症前の潜伏期間にも感染力を有する、という見方があることが挙げられる。そうであるなら、空港にサーモグラフィーを設置しても、発症前の感染者は通り抜けてしまう可能性がある。「しかし、首相はこうした点にはまったく言及しなかった」と、同紙は指摘する。

 また、首相がテレビ演説で「一カ月前から、武漢市にいるタイ人の救出に向けて準備をしてきた」と述べたことについても、「新型コロナウイルスによる肺炎の発生が報道されるようになってまだ1カ月も経っていない」と指摘。「首相がこの問題に真剣に取り組んでいない証拠だ」と、非難を強めている。

年間1000万人以上の中国人が来訪

 さらに同紙は、アヌティン保健相が「武漢はすでに封鎖されたのだから、タイのすべての空港にサーモグラフィーを置いておく必要はないのではないか」と発言したことも取り上げ、「武漢が封鎖される以前に、500万人もの人々が市外に出たというのに、認識が甘い」と糾弾する。「保健相は、新型コロナウイルス肺炎は普通の風邪と同じだとも発言した。実際には、死に至ることもあり得る肺炎であるにも関わらず、だ」

 同紙は、中国への渡航や中国からの渡航の中止を検討している香港や、すでに中国人への到着ビザの発給の停止に踏み切ったフィリピン、マレーシアなどに比べ、タイ政府の対応が甘いのではないか、とも指摘している。

 タイには年間1000万人以上の中国人が訪れている。そして、感染者はいまや中国人にとどまらない。冷静に判断することは重要だが、行政サイドの対応が手遅れとなっては、医療関係者の努力が無駄になる。社説は、「適切な情報を国民に提供し、医療関係者とも力を合わせてこの問題に取り組むべきだ」と、訴えている。

(原文:https://www.bangkokpost.com/opinion/opinion/1845894/get-virus-act-together)

 

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