G20からロシア排除の動きにアジアが反発
バイデン米大統領の発言を巡り浮き彫りになる各国の世界観
- 2022/4/16
ロシアのウクライナ侵攻をめぐり、今年11月にインドネシアで開かれる主要20カ国・地域(G20)首脳会議から、ロシアが除外される可能性が出ている。米国のバイデン大統領が3月24日、ロシアをG20 から排除すべきだという発言をしたためだ。
G20は、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、英国、米国のG7に加え、アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、中国、インド、インドネシア、韓国、メキシコ、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ、トルコ、欧州連合・欧州中央銀行を加えた20カ国・地域を指す。
主催国インドネシアは全加盟国を招待の意向
これについて、今年のG20首脳会議の主催国であるインドネシアの英字紙「ジャカルタポスト」は、3月28日付の社説で、「インドネシアの主催国としての立場は明快で、すべてのG20加盟国を開催地バリ島に招待し、すべての加盟国指導者に出席してほしいと望む」と述べ、バイデン大統領による呼びかけに強く反発した。
同紙は「G20は、加盟国を排除する明確なメカニズムを持っていない」とした上で、「ジョコウィ大統領はG20すべての国々の指導者と良好な関係を築いており、この複雑な事態に辛抱強く取り組み解決できるか、その外交手腕が試されている」と、指摘した。
シンガポールは対話の継続を呼びかけ
また、シンガポールの英字紙「ストレーツタイムズ」も、バイデン大統領のロシア排除呼びかけに反対した。3月31日付の社説は「ロシアとの対話の道を閉ざすな」と題し、これを論じた。
「ロシアをG20から排除することは、グループを分裂させることだ。中国は反対するだろう。インドや南アフリカ、ブラジルもこのような動きには賛成しないだろう。プーチン大統領は、G20の首脳たちに直接、話すことができるこの機会を逃すべきではない」
同紙は「ロシアはすでに経済大国ではない」としながらも、「グローバルサプライチェーンにおいて、あるいはレアアースやエネルギー、穀物輸出などさまざまな産業においてロシアが重要な存在であることは変わらない」と、指摘する。
シンガポールは3月、国連特別会合におけるロシア非難決議に賛成し、東南アジアでは唯一、ロシアに対する経済制裁を発動した国だ。しかし、排除は現実的ではない、との立場をとる。
「どんなにおぞましい存在であろうと、グローバル経済の現実から目を背けることはできない。ロシアを排除するよりも、室内に共に置いた方が良い」
欧米の「偽善」を批判するマレーシア
バイデン大統領の主張に、「力は正義なり」という危険を感じると指摘したのは、マレーシアの英字紙「ニューストレーツタイムズ」だ。3月29日付の社説は「『救世主』アメリカ」という皮肉をきかせたタイトルで、バイデン大統領がポーランドを訪れた際に語った内容を強く批判した。
同紙は、ロシア侵攻を支持するわけではないということを強調したうえで、アメリカが「正義」を語るのは理にかなっていない、と主張した。それは「勝者のルール」でしかない、ということだ。その上で同紙は、アメリカによるイラク戦争を例に挙げた。アメリカによる「制裁」は多くの罪なき人々の命を奪ったが、その事実をも「必要な代償だった」とするアメリカの立場に、社説は憤慨する。
「誤解してほしくないのだが、われわれはロシアがルールを守っていないことを軽視しているわけではない。われわれが強く懸念しているのは、欧米諸国の偽善だ。ルールを破った指導者は罰せられるべきだ。ロシアであろうとイスラエルであろうとアジアであろうとアフリカであろうと欧米であろうと。ダブルスタンダードではなく、一貫性がなくてはならない。戦争犯罪に問われるべきブッシュ前大統領やトニー・ブレア前英国首相は、罰せられることなく自由に世界を闊歩しているのだ」
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G20という多様な国家の集合体においては、その場しのぎの外交を超えた、それぞれの国の根本的な価値観、世界観が問われる。指導者たちの姿勢をしっかりと見届けたい。
(原文)
インドネシア: https://www.thejakartapost.com/opinion/2022/03/27/g20-presidency-firm-but-calm.html
マレーシア: https://www.nst.com.my/opinion/leaders/2022/03/784084/nst-leader-redeemer-america