スマトラ沖地震とインド洋大津波から16年
防災体制の強化を改めて訴えるスリランカの英字紙

  • 2020/12/30

 スマトラ島沖地震とそれにより引き起こされたインド洋大津波から16年がたった。被害はインド洋沿岸14カ国に及び、24万人が犠牲になった。12月26日付のスリランカの英字紙デイリーニューズは社説で、インド洋大津波からの教訓について書いた。

インド洋大津波から10年目の2014年12月26日に追悼式で花を撒く地元アチェの男性(c) AP/アフロ

警戒システムの点検を

 スマトラ島沖地震は2004年12月26日に発生したマグニチュード9.1の大規模な地震だ。この地震により大津波が発生し、震源に近いインドネシア、インド、スリランカ、タイ、マレーシアなど、インド洋沿岸を中心に、広く14カ国に被害を及ぼした。地震の規模でみると、スマトラ島沖地震は、1960年のチリ地震(マグニチュード9.5)、1964年のアラスカ自身(同9.2)に次いで大きなものだったという。なお、東日本大震災はマグニチュード9.0で、スマトラ島沖地震に次ぐ規模の大きさとなっている。

 社説は、インド洋大津波で24万人という甚大な被害が出た理由の一つとして、「早期警戒システムが整備されていなかったこと」を挙げた。

 「アメリカ地質調査所は、以前からインド洋沿岸の国々に津波の警告を出していたにもかかわらず、そのメッセージは必要な人々に届かなかった。それが甚大な被害をもたらしてしまった。今日、状況は改善されている。インド洋沿岸地域は、より洗練された津波情報の収集と共有ネットワークであるインド洋津波警戒システム(IOTWS)を導入した。さらに、60カ所以上に海底津波計を設置した」

 しかし、社説によれば、こうしたシステムは十分に機能を発揮していないようだ。

 「コロナ禍のただなかにいる今、自然災害はとかく忘れられがちだが、政府はこうした津波警戒システムの点検を怠ってはならない。近年、インドネシアではこのシステムが機能しなかった例がみられた。スリランカを含むインド洋沿岸諸国は、力を合わせて警戒システムの修理とアップグレードに取り組むべきだ」

日本の研究に注目

 社説によれば、16年が経ったとはいえ、大津波の経験は被災地に暮らす人々の心に今なお深く刻み込まれ、アジアのどこかで大きな地震が起きたと耳にすれば、すぐに高い所へ避難する準備をするという心構えができているという。それでも、啓発と教育はまだまだ続けなければならないと社説は言う。

 「携帯電話会社は、津波が発生した際に利用者に流す緊急SMSをテストし、沿岸部には避難を促すサイレンが設置され、テレビ局やラジオ局はスマートフォンを持っていない人たちにも警戒メッセージを伝えることができるよう指導が行われた。こうした取り組みをたゆむことなく続けることが大切だ」

 さらに社説は、世界各地で研究が進む津波の仕組みとその防災策についても紹介している。特に、TSUNAMIという言葉を生み出した日本の取り組みに注目し、「津波の防災策としてそびえたつような防潮堤を築くより、沿岸部に緑の丘を設ける方が海浜の景観も壊すことなく効果が高いという研究結果もある」と指摘し、次のように訴える。

 「地震や津波の被害を受ける可能性のあるスリランカの大学でも、日本のように津波研究に積極的に取り組むべきだ。実際、つい最近も地震があった。地震や津波は事前の警告なくやってくる。私たちは、大地震や津波に常に備えていなければならない」

 社説でも紹介されている通り、津波という言葉は、今や、世界各地でそのままTSUNAMIと使われている。そして、日本の津波対策が世界から注目されていることも、この社説が改めて示している。自然の猛威を緩和するために、自然と調和する方法を選ぶーー。スリランカの人々の心をとらえたのがコンクリートの防潮堤ではなく、海岸防災林だったことも、興味深かった。

 

(原文: http://www.dailynews.lk/2020/12/26/editorial/237119/tsunami-lessons-future)

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