ロシアのウクライナ侵攻と米国内の世論
内向きだった人々の関心が再び世界へ

  • 2022/3/14

強硬策への支持の高さが明らかに

 このように、ロシアの侵攻によって始まった欧州における戦争は、昨年8月、アフガニスタンからの秩序ある撤退に失敗して内向きになりがちだった米国人の関心を再び国際情勢に向けさせる役割を果たしている。

 米ニュースサイトNewsNationは3月9日、1021人の有権者に対して実施した世論調査の結果を公表し、84%が「ウクライナ戦争のニュースに関心を寄せ、詳しく追っている」と回答したことを明らかにした。同調査では、70%がバイデン大統領の打ち出した対ロシア経済制裁を支持し、米国がウクライナに武器を供給することに賛成する人も73%に上ったという。さらに、65%の回答者が「たとえ米国内のガソリン価格が上昇しても、ロシアへの制裁を支持する」と回答した。

 これは、テキサス大学オースティン校のジョーダン・タマ教授をはじめとする研究者たちが開戦前の2月3日に発表した予想と一致している。タマ教授らは、過去1年に行われた各種世論調査に基づき、「米国がロシアと開戦することにならない範囲で、米世論はウクライナへの軍事支援や、ロシアに対する大々的な経済制裁を超党派で支持するだろう」と予測していたのだ。

 タマ教授らは、「米国人は一般的に内向きだというイメージがあるが、世論調査からは、多くの人々がロシアの侵略行為に対して強い姿勢で対応すべきだと考えていることが読み取れる」と分析。こうした世論が後押しとなって、バイデン政権がロシアに対して強い措置を採ることになるだろうと予測していた。これまでは内向きだった共和党支持者の間でもウクライナへの関与を求める声が高まっていることが指摘されていたことは、興味深い。

米国人は犠牲を払いたくないものの、兵器供給など強力なウクライナ支援を支持している。(出典: Pexels

 もっとも、同教授らは「米国が世論を背景に強い姿勢で対応すれば、プーチン大統領に侵略を思いとどまらせることができる」との見方も示していた。その希望的な観測は外れたが、硬化する米世論を背景に、バイデン政権がより強い措置を打ち出せる「のりしろ」が生まれるとの分析は当たっていたことになる。

 内向きのように見えた米世論が、実は、欧州に関与することに対してさほど強い拒絶感を抱いていないことが明らかになったことで、バイデン政権にとっては、引き続き対ロシア政策の自由度が高くなったと言えるだろう。

 もっとも、同教授らは「米国が世論を背景に強い姿勢で対応すれば、プーチン大統領に侵略を思いとどまらせることができる」との見方も示していた。その希望的な観測は外れたが、硬化する米世論を背景に、バイデン政権がより強い措置を打ち出せる「のりしろ」が生まれるとの分析は当たっていたことになる。

 内向きのように見えた米世論が、実は、欧州に関与することに対してさほど強い拒絶感を抱いていないことが明らかになったことで、バイデン政権にとっては、引き続き対ロシア政策の自由度が高くなったと言えるだろう。

 

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