モンゴルを舞台に激化する大国間の駆け引きと資源競争
中ロを横目に急接近する米モそれぞれの思惑とは

  • 2023/10/13

近隣国との距離を巧みに維持するオユーンエルデネ外交

 こうした中国の自己抑制こそ、まさにモンゴルが狙っていることなのではないか。20世紀にはソ連と組んで中国に対抗したモンゴルは、21世紀の今、米国に接近することにより中国を牽制しており、その重要なカギを握っているのがレアアースなのだ。

モンゴルは米国に接近する一方で、絶対に無視できない南隣の中国にも仁義を切っている。写真は、訪米前の6月に中国を訪問して習近平国家主席と会談するオユーンエルデネ首相 (c) 新華社/アフロ

 そんなモンゴルは、周辺国とも独自の距離感を維持している。この地域には、中国とロシアが主導し、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタン、インド、パキスタン、イランとともに地域の安全保障や経済連携を目指す上海協力機構(SCO)や、旧ソ連を構成していたロシア、カザフスタン、ベラルーシ、アルメニア、タジキスタン、キルギスによる集団安全保障条約(CSTO)があるが、モンゴルはどちらとも一定の距離を置き、目立たない形で米国と軍事協力を推進している。

 とは言え、決して米国との関係に前のめりになっているわけではない。事実、オユーンエルデネ首相は、訪米に先立って6月に「北京詣で」をい、習近平国家主席や李強首相らとの会談に臨んで中国への仁義を切っており、そつがない、したたかな外交を展開している。さらに、ロシアから中国に伸びる「シベリア2天然ガスパイプライン」が同国内を通過することにも同意している。

 こうしたモンゴルの姿勢には、理由がある。まず、中国とロシアという二つの超大国に挟まれた内陸国のモンゴルは、有事の際に逃げ場がない。また、米国務省の統計によれば、モンゴルが産出する石炭などの鉱物資源は90%が中国に輸出されているうえ、モンゴルの二国間負債の60%、そして中央銀行の負債の82%が中国に押さえられているという。こうした事情を抱えるモンゴルにしてみれば、中国ともロシアとも、できる限り友好な関係を維持しておきたいというのが本音だろう。そのうえで米国をうまく利用し、外交の独立を守る戦略だと思われる。

 翻って中国は、ロシアおよびモンゴルと共に9月19日に開催した安全保障問題高官会議について、「三カ国間の経済回廊建設を加速することで合意し、戦略的な協力関係にまた新たな意味が加わった」と成果を宣伝するなど、モンゴルを米国の影響下からできるだけ引き離したい意向を隠さない。モンゴルにとっては、オユーンエルデネ首相の巧みな外交によって中国を焦らせるという所期の狙いが達成され、中国から有利な条件を引き出せる環境が整いつつあると言えよう。

 おりしもモンゴルでは、国営企業エルデネス・タワントルゴイなどが手掛ける中国向け石炭輸出事業に関連する大規模な汚職の摘発、米国などの協力を受けて進められている。まさに、米国の手を借りて中国絡みの汚職に立ち向かうという、『VIVANT』さながらの鉱物資源をめぐる各国の駆け引きが激化しつつある。

 こうした情勢を背景に、米国のモンゴルに対する関心は今後も一層高まり、両国の関係がさらに接近していくことは、間違いないだろう。

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