ミャンマー「軍事法廷」即日判決の異常さ 久保田徹さんに禁固7年 
拘束の正当化狙いか

  • 2022/10/8

 ミャンマーで抗議デモを取材中に拘束されたドキュメンタリー作家の久保田徹さんが10月5日、禁固7年の判決を受けた。判決を下したのは通常の裁判ではなく軍事法廷で、わずか1日の審理で有罪判決となった。弁護士の立ち合いも認められない異常な裁判だった。

軍事法廷で禁固7年の判決を受けた久保田徹さん(友人提供)

死刑・無期・最高刑しかない

  久保田さんは5日に開かれた軍事法廷で、インターネットでの言動を規制する電子取引法違反罪で禁固7年、公務員らに不正を促す言動などを規制する刑法505条A項違反罪で禁固3年の有罪判決を受けた。具体的な認定事実は明らかにされておらず、弁護士も立ち会えないため、詳細は闇に包まれたままだ。国軍側は2つの事件の刑は同時平行で執行するとしており、実質的には禁固7年と同じ扱いになる。またこれとは別に、観光ビザで入国して取材した入国管理法違反罪については、軍事法廷ではなく通常の裁判で審理が続いている。

 ミャンマーの軍事法廷は、戒厳令が発布されている地域に適用される。久保田さんが拘束された南ダゴン郡区も、クーデター後の昨年3月以降戒厳令が敷かれており、ヤンゴン地区司令官が司法権を持つ。軍事法廷は非公開で、被告が選任した弁護士が同席することもできず、短時間の審理で判決を下すことができる。有罪となれば、死刑もしくは無期懲役、または各法律に定められた最高刑に処すと決められている。いったん判決が出れば控訴もできない。今回の久保田さんのケースでも、それぞれの規定の最高刑が言い渡されているとみられる。

 久保田さんの軍事法廷でも2つの罪がわずか1日で審理され判決が行われており、まともな審理ができていたとは考えられない。またミャンマーでは、軍事法廷に限らず一般の裁判でも裁判官は捜査当局の言いなりとなり有罪判決を出すため、裁判自体が形骸化している。とりわけ軍事法廷では次々と死刑判決が言い渡されており、7月には著名民主活動家ら4人が処刑されている。

国軍「釈放するかどうかは判決の後だ」

 判決を受けた久保田さんの反応は伝わっていないが、これまでに大使館員や家族との電話が認められ、健康問題には問題がないという。久保田さんは獄中から9月下旬、日本の人々に向けて「ミャンマーは見えない戦争状態にある。この国に生きる人々に注目しつづけて欲しい」とメッセージを寄せ、弾圧や内戦に苦しむミャンマーの人々の現状に関心を持ってもらうように訴えた。

7月31日、久保田徹さんの解放を求める在日ミャンマー人ら(筆者撮影)

 国軍側は8月17日の報道官記者会見で、「法に従って判決を受ける必要がある。釈放するかどうかは3つの事件の後の話である」と話している。軍事法廷で外国人に禁固刑という厳しい処置を打ち出すことによって、人権侵害を問題視する諸外国をけん制し、久保田さん拘束の正当性を印象づける思惑があると思われる。一方で皮肉な話ではあるが、現在のミャンマーでは司法が独立していないため、国軍指導部が判断すれば、刑期にかかわらずいつでも釈放できるのも事実である。

8月3日、久保田徹さんの即時解放を求め記者会見する友人ら(友人提供)

 久保田さんが拘束されて2カ月余り。現在、丸山市郎・駐ミャンマー日本大使が先頭に立ち、大使館挙げての体制で交渉や支援活動を行っている。厳しい交渉には違いないが、不当に拘束された日本国民を救出するため、粘り強く交渉を続けてほしい。

 

 

 

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