国際社会はスーダン緊急停戦へ尽力を
戦闘激化のスーダン情勢をアジア各紙の社説はどう伝えたか
- 2023/5/11
アフリカ北東部、スーダンの国土が戦場と化している。現地からの報道によると、4月15日に国軍と準軍事組織RSFによる戦闘が始まったのち、空爆や砲撃で450人以上が死亡し、4000人余りが負傷した。双方は72時間の停戦に合意し、この間に多くの国が、自国民を脱出させるべく退避活動にあたった。日本政府も、在留日本人とその家族を、自衛隊機でスーダンからジブチに退避させた。緊迫するスーダンの現状を伝える南アジア2紙の社説を紹介する。
さらなる流血を防ぐために当事者と交渉を
バングラデシュの英字紙デイリースターは4月24日、「世界はスーダン和平に向けて努力を」と題した社説を掲載した。
社説によると、首都ハルツームとその周辺地域で起きている激しい戦闘では、空爆や大砲での攻撃により、市民の犠牲が多く出ているという。また、医療施設への攻撃が少なくとも11件確認されるなど、生存に不可欠なインフラが狙われているという。
「このような事態で最も苦しむのは、スーダンの市民たちだ。首都やその近郊にある病院は7割近くが閉鎖に追い込まれており、状況は危機的だ。広範囲にわたり、食料や水、電力が不足している上、インターネットサービスもほとんど停止しており、外部との通信も困難な状況だ」
社説は、このような状況において「国際社会は、早急にスーダンの人々に支援を」と呼びかける。「スーダンでは、戦闘が始まる前から、人道的支援の必要性は高かった。子どもを含む1150万人の住民が、安全な水や(トイレなどの)衛生サービスを、緊急に必要としている。また、60万人以上の子どもたちが栄養失調に苦しんでいる」という。
さらに、最も重要なことは「国際社会が紛争当事者を交渉のテーブルにつかせることだ」と主張する。「これ以上、必要のない流血を防ぐためには、緊急停戦が必要だ。世界が危機的状況にある今、スーダンの武力紛争をこれ以上長引かせることは許されない」と、社説は早期停戦に向けた国際社会の努力を促した。
悪夢をもたらす2人の将軍
パキスタンの英字紙ドーンも、4月25日付の社説で、スーダン問題を採り上げた。
こちらの社説では、スーダンの紛争の背景を説明している。今回の戦闘は、政府軍の陸軍長官バーハン将軍と、RSFグループを率いるタガロ将軍、2人の将軍の権力闘争なのだという。
「2人の将軍が、アフリカを再び長期内戦のどん底に追いやるような、残虐な権力闘争に明け暮れている。スーダンは独立以来、長い間、軍政下で苦しんできた。2019年には大規模な抗議行動によって独裁者が追放され、軍政が幕を閉じたが、民主化への移行は短期間で終わってしまった」
社説は、「国際社会は、この紛争が長く、血なまぐさい戦いになると感じている」と指摘する。だからこそ各国は、自国民をスーダンから退避させている、というのだ。事実、首都ハルツームにあるパキスタンの公館も、数日前に銃撃を受けたと報告されているという。
社説は、各国政府が紛争地域にいる自国民を安全に帰還させることが最優先だとする一方、停戦に向けた国際社会の取り組みの必要性にも言及し、「アラブ連盟、アフリカ連合、OIC(イスラム協力機構)などは、戦闘に明け暮れる将軍たちに、銃を捨てさせるよう一層の努力をしなくてはならない」と主張した。
(原文)
バングラデシュ:
https://www.thedailystar.net/opinion/editorial/news/world-should-push-peace-sudan-3303386
パキスタン:
https://www.dawn.com/news/1749183/sudanese-conflict