バングラデシュのジュート工場の労働者を救え
経営体質の刷新で「黄金の繊維」の復活を訴える地元英字紙

  • 2020/7/6

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、バングラデシュにある22カ所の公営ジュート工場がこのほど閉鎖され、2万5,000人の労働者が解雇された。6月30日付のバングラデシュの英字紙デイリースターは、この問題を社説でとりあげている。

長くて柔らかくかつ光沢のあるジュートは、「黄金の繊維」と呼ばれるバングラデシュの一大産業だ (c) ZUMAPRESS/アフロ

怠慢だった経営体質

 「解雇されたジュート工場の労働者たちには養うべき家族もいるし、月々の家賃も払わなければならない」。労働者たちの苦境について、社説はこう代弁する。そして、「彼らがこうした苦境に陥ったのは、新型コロナウイルスのせいではなく、公営工場の経営体質が長きにわたり怠慢だったせいだ」と、憤りをあらわにする。

「不正や時代錯誤はなはだしい設備、無能なスタッフ、販売努力の欠如――。これらの事項を鑑みるに、公営工場の閉鎖は避けられなかったと言わざるを得ない。これは、民間のジュート工場の経営が好調であることからも明らかだ」

 では、公営工場はなぜこうした状況下で赤字を出しながら経営が続いていたのか。社説は、「いったい誰がこの赤字工場から利を得るというのか。決して、そこで働く多くの労働者たちではないことだけは確かだ」と、問いかける。

社説によれば、労働者たちはこれまで幾度となく公営のジュート工場の不適切な経営に講義し、改革を求めてきたが、その声が届くことはなかった。社説によれば、10年余りにわたって福利厚生費が支払われていない労働者もいるという。

後手に回った公営企業の対応

 政府のジュート繊維大臣は、これまでに退職したすべての労働者の福利厚生費と、現在、働いているすべての労働者の賃金および福利厚生費について、「近いうちに」支払うと約束し、500億タカ(約650億円)の基金をそのために創設するという。これに対し、社説は「今できるのなら、なぜ、もっと前からこの対応を取らなかったのか」と、疑問を投げかけ、公営工場の経営問題について、次のように指摘する。「2010年に成立したジュート包装義務化の法律が徹底されなかったのはなぜか。工場を近代化し、半官半民の経営で出直すという公約もどこへ行ったのか」

 その上で社説は「他業種でも、今回のジュート工場と同じ運命をたどる公営企業は少なくないだろう」と、指摘する。「多額の資金を投じ、経営基盤がぜい弱で、不正が横行し、精算システムは革新性がなく、なんの営業努力もせず、労働者の権利を無視するという体質は、ほかの公営企業も同様だ。政府は、労働者に対してすみやかに再雇用の道を開かなくてはならない」

 ジュート産業は決して斜陽産業ではない、と社説は言う。「不正をなくし、効果的な経営戦略を打ち出せば、“黄金の繊維”の公営工場がいつか復活する日が来るかもしれない」。事実、世界的にプラスチック材の使用を控える動きが高まっている今、天然素材のジュートの役割が見直されている。インドに次ぐジュート生産大国であるバングラデシュにとって、これは大きなチャンスである。旧態依然としたシステムによってこの貴重な機会が失われているとしたら、社説が示す苛立ちも当然だと言えよう。

 

(原文:https://www.thedailystar.net/editorial/news/thousands-jute-mill-workers-must-be-saved-destitution-1922513)

 

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