過去最悪のデング熱流行 アジア各国で深刻な懸念
急増する感染者数に追いつかぬ対策

  • 2024/5/3

世界各地でデング熱が大流行している。ロイター通信によると、世界保健機関(WHO)は、ブラジル、アルゼンチン、パラグアイなど、南米各国において、1月から3月までのデング熱の症例が前年同時期の3倍にのぼったと発表。「おそらく過去最悪のデング熱シーズンになる」と述べた。この傾向はアジアでも同様で、すでに深刻な状況が広がっている。

デング熱ウィルスを媒介するネッタイシマカ(左)と、電子顕微鏡でみたデング熱ウイルス(右)(c) CDC / NIAID

バングラデシュが直面する「二次感染」の脅威

 バングラデシュの英字紙デイリースターは3月9日付の社説で、「デング熱はすでに警戒レベル」と題した記事を掲載した。

 社説によると、バングラデシュでは今年に入ってからの2カ月で1,394人がデング熱に罹ったという。昨年同時期の732人と比べ、2倍近くに増加している。死者も17人に上り、昨年同時期の9人を上回っている。

 社説によると、専門家が懸念するのは、二次感染(一度目の感染の後、異なる型のデングウイルスに感染すること)だ。病状がより深刻化する可能性が高く、重症例の多くを占める。バングラデシュでは2023年、すでに32万人以上がデング熱で入院し、1,705人が死亡。「最悪の流行」と言われた。今年も流行することになれば、二次感染による重症患者が増える懸念は高まる。

 さらに、適切な保健サービスが不足しているという問題点もある。2023年は首都ダッカに比べ、ダッカ以外の地域でのデング熱の患者数が圧倒的に多かったことから、首都以外での医療インフラに課題があることが浮き彫りになっている。そのほかにも、蚊の駆除能力の欠如、例年より早い雨季の到来など、不安要素は多い。

 社説は、「デング熱の脅威を最小限に抑えるため、当局は今すぐ対策を講じるべきだ」と、直ちに国を挙げて取り組む必要性があると訴える。

対策遅れるネパール 今、必要な取り組みは

 ネパールの英字紙カトマンドゥポストも、3月19日付の社説で、デング熱の流行が深刻化する可能性を指摘した。

 「政府は、デング熱を理解し、絶えず意識向上をさせようという努力をほとんどしていない」と、社説は批判する。ネパールでの流行はまだ始まったばかりだが、「近年は不吉な傾向にある」という。2019年の時点では、感染者は1万6000人超、死者は6人であったが、ここ数年で感染者が急増している。2022年には5万4000人が感染し、88人が死亡。2023年には5万2000人が感染し、20人が死亡と、2年連続で感染者が5万人を超えている。しかも、それはあくまで報告されている数字であり、無症状の症例などを含めれば、実際の感染者数はもっと多いと見られる。

 社説はこうした状況に対し、世界各国がどのように取り組んでいるかを例示した。例えばマレーシアでは、リアルタイムで症例を報告することを義務付けるシステムがあり、当局による状況把握と迅速な対応に役立っている。また、インドでは、昆虫の専門家がデング熱の封じ込めに携わっているという。

 社説は、「ネパールでも、こうした革新的な方法を打ち出さない限り、このウイルスによって毎年大きな苦痛がもたらされるだろう。冬季や山間部でも患者が報告されており、問題は複雑になっている」と指摘する。また、国民も自分自身や家族を守るための高い意識を持つ必要があるとし、「政府、地方自治体、一般市民が一致団結した努力によってのみ、デング熱を封じ込めることができる。デング熱の破壊力を甘く見てはいけない」と、述べている。

 

(原文)

ネパール

https://kathmandupost.com/editorial/2024/03/19/dengue-dangers

バングラデシュ

https://www.thedailystar.net/opinion/editorial/news/dengue-situation-alarming-already-3562251

 

関連記事

 

ランキング

  1.  ドイツ・ベルリンで2年に1度、開催される鉄道の国際見本市「イノトランス」には、開発されたばかりの最…
  2.  今年秋、中国の高速鉄道の総延長距離が3万マイル(4.83万キロ)を超えた。最高指導者の習近平氏は、…
  3.  日本で暮らすミャンマー人が急増しています。出入国在留管理庁のデータによると、2021年12月に3万…
  4.  ドットワールドとインターネット上のニュースサイト「8bitNews」のコラボレーションによって20…
  5.  11月5日に投開票が行われた米大統領選挙では、接戦という事前の予想を覆して共和党のドナルド・トラン…

ピックアップ記事

  1.  11月5日に投開票が行われた米大統領選でトランプ氏が再選したことによって、国際情勢、特に台湾海峡の…
  2.  ジャーナリストの玉本英子さん(アジアプレス・インターナショナル)が10月26日、東京・青山で戦火の…
  3.  ドットワールドと「8bitNews」のコラボレーションによって2024年9月にスタートした新クロス…
  4.  米国・ニューヨークで国連総会が開催されている最中の9月25日早朝、中国の大陸間弾道ミサイル(ICB…
  5.  「すべてを我慢して、ただ食って、寝て、排泄して・・・それで『生きている』って言えるのか?」  パ…
ページ上部へ戻る