デング熱「非常事態」の脅威 新型コロナも再びまん延か
繰り返す感染症のアウトブレイクに問われる政府の対応力
- 2024/5/20
世界保健機関(WHO)は4月18日、中南米におけるデング熱の感染状況が「非常事態」に達していると発表した。中南米地域の感染者は520万人超に上り、3月の350万人から大幅に増加している。デング熱は今年、南アジア諸国でもアウトブレイクが予測されている。なかには新型コロナが再流行している地域もあり、事態の悪化に懸念が高まっている。
後手に回るデング熱対策 バングラデシュの現状
バングラデシュの英字紙デイリースターは4月8日付の社説で、デング熱の感染者が急増する恐れがあると報じた。
社説によると、バングラデシュは2023年、デング熱の「最悪の流行」を経験したが、2024年はさらに状況が悪化する可能性があるという。2023年は約32万人が感染して入院し、1,705人が死亡した。2024年は、4月4日現在、デング熱の入院患者は1,740人と、まだそれほど多くはない。しかし、デング熱が流行する季節はこれからであり、今後が懸念されるという。
デング熱がアウトブレイクする理由として、社説は、首都ダッカをのぞき、患者の居場所を特定したり、蚊の繁殖地を除去したりする対策が行われていないことを挙げる。デング熱を媒介するヤブ蚊は、ダッカ以外の場所により多く生息しており、人の移動によって都市に持ち込まれるため、域外でも取り組みを強化する必要があるという。また、デング熱の感染防止につながる公衆衛生の知識がなく、蚊帳を使用していない人も多いことを挙げ、人々の意識の低さについても危惧している。
コロナウィルスの「逆襲」受けるネパール
一方、ネパールでは、新型コロナが再び流行の兆しを見せている。ネパールの英字紙カトマンドゥポストは4月4日付の社説で、新型コロナが「緩やかに、だが着実に増加している」と報じた。
社説によると、「首都カトマンドゥの熱帯感染症病院のベッドが新型コロナ感染症の患者で再び埋まりつつある」という。患者の多くは65歳以上の高齢者で、重症化しやすく、死者も出ているという。その一方で、ネパール政府は新型コロナ感染について積極的な調査を中止しており、詳しい感染拡大状況は定かではない。社説は、「インドからネパールに帰国した人々から相当数の症例が報告されている」と述べ、再流行が国外から持ち込まれている可能性を指摘する。
そのうえで、「新型コロナが再びまん延した場合の対応力は不足している」と社説は危惧し、「過去2年間、大規模な感染がなかったため、私たちはすっかり油断してしまった。大流行は備えが不十分な時にこそやって来ると分かっているはずなのに」と、述べる。
社説によれば、新型コロナ感染症のまん延が収まるにつれて予防接種を受ける人の数も減り、政府も予防接種の宣伝をしなくなった。検査センターや予防接種センターも各地で閉鎖され、人々の関心も下がっているという。
「ウイルスの逆襲は、このような間隙をぬって起こるのだ。感染者が増えている今、政府はPCRの検査装置のほこりを払い、対策を再開しなければならない」。社説はこのように述べ、政府に対策を求める一方、市民に対しても、公共の場ではマスクを着けるなど、警戒を怠らないよう求めた。
(原文)
バングラデシュ:
https://www.thedailystar.net/opinion/editorial/news/eid-and-dengue-can-be-dangerous-mix-3584731
ネパール:
https://kathmandupost.com/editorial/2024/04/04/knocking-again