進展しないミャンマー問題をアジアはどう見ているか
軍事クーデターの発生から間もなく2年
- 2023/1/12
ミャンマーで軍がクーデターによって実権を握ってから間もなく2年が経とうとしている。この間、ミャンマー国内では多くの国民が軍に抵抗を示し、殺害された。クーデター以前から迫害されていた少数派イスラム教徒ロヒンギャの人々は、さらに過酷な状況に陥っている。東南アジアの2紙が、ミャンマーをめぐる問題について社説を掲載した。
海上をさまようロヒンギャを見捨てたタイ政府
タイの英字紙バンコクポストは、2022年12月25日付の社説で「ロヒンギャに対する緊急救助が必要だ」との記事を掲載した。
「世界中の人々が家族と共にあることや、分かち合う喜びを祝福するクリスマスのこの日、200人のロヒンギャの人々が海の上で飢えて、命を失おうとしている。この3週間あまり、彼らには食べ物も水もなく、女性や子どもを含む20人がすでに亡くなった。もしこのまま彼らを救わなければ、もっと多くの人が弱り、亡くなっていくだろう」
社説によれば、バングラデシュの難民キャンプの窮状から逃れようとしたロヒンギャの人々を乗せたボートは、11月半ばに出港してマレーシアかインドネシアを目指したのではと見られるが、12月に入りボートが海上で壊れてしまったのだ。タイのプーケット島沖で彼らが見つかり、人権団体はタイ政府に彼らを保護するように求めたという。しかしタイ側は、すでにボートがタイの領海にいないことを理由に救助しなかった。社説は、「タイ政府は、ロヒンギャの人々が今も海上でさまよっているであろうことを認めようしていないが、タイ領海が人身売買に利用されていることは否定できない」と指摘する。
社説によれば、ロヒンギャの人々はミャンマー国内で迫害や暴力を受けバングラデシュに逃れ、難民キャンプに収容されている。しかし、キャンプでの暮らしも厳しいため、容易に人身売買の標的になってしまうのだという。
米国の人身取引報告書によれば、2014年にティア3だったタイは、2015年にはティア2にランクアップした。政府は最高位であるティア1を目指したいとしている。しかし社説は、「ティア1になるための唯一の方法は、人身売買事件を真剣に捜査し、犯人を訴追し、犠牲者を救助し、人身売買を手助けする腐敗した公務員を裁くことしかない。しかしタイ政府は、ロヒンギャの人々を助けなかったうえ、背景にいる人身売買の犯人を裁かなかったことで、ティア1へ昇格するチャンスを自らつぶした」と、政府の姿勢を非難した。
5項目の合意を巡るASEAN諸国の温度差
マレーシアの英字メディア、ニューストレイツタイムズは、2022年12月20日付の社説で東南アジア諸国連合(ASEAN)のミャンマー軍に対する姿勢を批判した。
ASEANとミャンマー軍は2021年4月、事態の打開に向け暴力の即時停止など5項目で合意した。しかし、それから20カ月が過ぎても事態は変化していない。5項目で合意したのは、ブルネイが議長国だった時だった。その後、カンボジアが議長国を務め、2023年にはインドネシアが議長国となる。しかし社説は、「インドネシアをもってしても、事態は動かせないだろう」との見方を示す。
その理由として、社説は「5項目の合意というが、ミャンマー軍に対する姿勢には加盟10カ国それぞれに温度差がある」と指摘する。「カンボジアはミャンマー軍にソフトなアプローチをしたが、それは、軍をより残虐に、攻撃的にしただけだった」
また、「ミャンマーにはASEAN以外から援助があり、軍は孤立しているわけではない」とも指摘した。その例として、中国やロシア、インドがミャンマー軍に武器を提供していることを挙げる。そのうえで社説は「効果的な対策を打てずにいる国際機関にも問題がある」と述べ、「ミャンマー問題はASEANだけでは解決できず、国際社会全体が協力をしなければならない」と主張した。
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米中対立やロシアのウクライナ侵攻を機に世界の分断が始まったかのように思われるが、ミャンマー軍は、こうした対立の中、ロシアや中国に近づくことで「居場所」を見つけてしまったのだろう。暴挙をこれ以上長引かせてはならない。
(原文)
タイ:
https://www.bangkokpost.com/opinion/opinion/2468387/rohingya-need-urgent-rescue
マレーシア:
https://www.nst.com.my/opinion/leaders/2022/12/862534/nst-leader-myanmar-mutiny