インドネシア政府が「楽観的すぎる」経済成長予測を発表
緊急経済対策との矛盾を地元紙が批判
- 2020/6/22
新型コロナウイルスの感染拡大が長引くなか、各国や国際機関が今年度および来年度の経済成長率の予測を発表している。多くの国でマイナス成長が見込まれており、新型コロナウイルスが経済に及ぼす影響は甚大なものになるとみられている。インドネシアの英字紙ジャカルタ・ポストは、6月18日付の社説でインドネシア政府の楽観的すぎる経済成長予測について「根拠がない」と指摘している。
ワクチンの開発は早くても今年後半に
社説は、インドネシア政府は2021年の経済成長予測を4.5%から5.5%と打ち出したことについて「政府はなぜこれほど楽観的なのか」と、批判する。
その理由はこうだ。「ワクチンや治療薬が開発されて普及するまで感染のリスクはなくならないと言われており、人々の交流も危険視されているため、ビジネス環境はいまだ平常には戻っていない。ビル・ゲイツは、ワクチンの開発は早くても今年の後半、遅ければ2021年の半ばになるとの見通しを示しており、それまでは、社会的距離を維持し、検査を行い、感染経路をたどり、感染者を隔離することしかできない。綱渡り状態が続く」
こうした状況下で政府が発表した成長率予測に対しては、多くの主要派閥が「非現実だ」といって拒否したと社説は報じている。
インドネシアの2020年第一四半期の経済成長率は、2.97%だった。これは、2001年の第一四半期以来、過去最低の数字だ。それでもかろうじてプラス成長を記録した理由について、社説は、インドネシアで最初の感染者が確認されたのが、第一四半期の後半に入った3月上旬だったことを挙げる。その上で、国際的な経済評論家たちの多くが、世界経済が今後、3~5%のマイナス成長になるとみていることを明らかにし、「3月半ばからほとんどの経済活動が中断されたインドネシアの経済成長率は、ゼロから2%程度にとどまる」との見方を示す。「経済の回復には、1~2年要かかるだろう。それも、ワクチンがいつ普及できるか次第だ」
引き下げられた法人税
さらに社説は、新型コロナウイルスが経済活動に与える影響について、次のように述べる。
「経済活動の制限が続けば、購買力の低下や失業者の増加とともに、経済危機のリスクが高くなる。消費者と直接接触する機会が避けられない観光業などのサービスセクターは、社会的距離を維持しなければならなかった上、集会やイベントなども実施できずにいたため、社会活動が著しく制限されている」
もちろん、国が打ち出す経済成長率予測は、悲観的過ぎるものであってはならない。国家予算は、政府の行動や優先順位、決断を表すメッセージであり、終末を思わせるような悲観的なものであってはならないからだ。「しかし、今回のようにあまりに非現実的なマクロ経済の指標は、ビジネス界に誤解を与えかねない」と、社説は指摘する。
インドネシア政府は、高い経済成長率予測を掲げる一方、緊急経済対策として3月31日に法人税を25%から22%に引き下げた。今後、2022年には20%まで引き下げる予定だという。そんな状況であるにも関わらず、政府が楽観的な経済見通しを発表する根拠はどこにあるのか。高い経済成長率を維持するために国民にさらなる負担がかかることになれば、真の経済成長とは言えないだろう。
(原文:https://www.thejakartapost.com/academia/2020/06/18/unrealistic-growth-target.html)