イスラエルのガザ報復爆撃 東南アジアにも影響
世界中に飛び火する苦悩と憤り
- 2023/12/23
日々、犠牲者が増え続けるイスラエルとハマスの衝突。遠く離れた東南アジア諸国も、その影響から逃れることはできない。
対立に煽られ過激化する人々
シンガポールの英字紙ストレーツタイムズ紙は11月9日付紙面で「ガザ紛争への抗議行動が過激化か」と題した社説を掲載し、世界各地で起きている抗議運動について論じたた。
社説は、「これまでイスラエルによるガザへの報復砲撃によって1万人以上の命が奪われたことに対し、世界中で抗議デモが起きている。これは、ハマスのテロ攻撃によりパレスチナの人々が重い代償を払わされている現実に対して、人々が感じている苦悩と憤りの大きさを表している」と、現状を伝えている。
また、「パレスチナ人の死者数がイスラエル人の死者数をはるかに上回る状況が続くなか、国際世論はパレスチナ人の死と苦しみが終わることを求めている。抗議行動は、ニューヨーク、ロンドン、ベルリン、パリ、イスタンブール、ラホール、ニューデリー、ダッカ、ジャカルタ、クアラルンプール、シドニーなど、多くの都市に広がっている」と指摘。「イスラエルとハマスの対立が人道的な観点から、もはや中東だけの問題ではなくなっている」との見方を示す。
その一方で社説は、「過激派グループが自らの邪悪な意図を拡散するために人々の憤りを利用するのを防ぐことが重要だ」と主張する。社説は、イスラエルとハマスの戦闘が始まって以来、過激派サイトへのアクセスが3倍に増えていることに対してシンガポールのローレンス・ウォン副首相が警鐘を鳴らしていると伝えている。また10月には、ユダヤ教徒やイスラム教徒に対する攻撃的な発言や行動について警察への通報も8件あったという。
社説は、「イスラエルとハマスの紛争をシンガポール人が解決することはできない」としたうえで、「その対立による悪影響がシンガポールに達し、調和を害することがないように警戒しなければならない」と、指摘している。
標的にされても揺るがぬ「インドネシア病院」の誇り
イスラム教国家であるインドネシアの英字紙ジャカルタポストは11月9日、「ガザのインドネシア病院」と題した社説を掲載した。
パレスチナ自治区ガザ北部にある「インドネシア病院」は、インドネシア人の寄付金などによって2015年に建設された230床の病院だ。今回、イスラエル軍の攻撃を受けながらも、同病院では170人の医師や看護師など医療従事者が数千人の治療や避難を受け入れ、人命救助に奔走してきたが、11月16日についに閉鎖に追い込まれた。
この社説は、インドネシア病院が閉鎖される前に掲載された。社説は、イスラエル軍報道官がインドネシア病院について「ハマスにより建設されたもので、地下には戦闘員が潜んでいる」と見ていたと伝えている。イスラエル軍のこの見方に対し、インドネシア政府は「病院は完全に人道的な目的でインドネシアが建設したものであり、ガザ市民の医療ニーズに応えてきた」と主張していた。
社説はこうしたインドネシア政府の姿勢を評価した上で、次のように訴えている。「一部のアラブ諸国は、パレスチナ人を犠牲にしてイスラエルと国交を開くことを決めた。しかし、私たちはパレスチナにゆるぎない支援を行っていることを誇りに思っている。ガザのインドネシア病院は、インドネシアが一貫してパレスチナ人の人権を擁護し続けている証拠だ」
(原文)
インドネシア:
https://www.thejakartapost.com/opinion/2023/11/09/the-indonesia-hospital-in-gaza.html
シンガポール:
https://www.straitstimes.com/opinion/st-editorial/gaza-protests-risk-getting-radicalised