JR東日本がアジアの鉄道人財の育成を開始
ミャンマー国鉄の駅員が上野駅にやって来た

  • 2020/2/5

相次ぐ鉄道会社の海外展開

 日本とミャンマーの関係は深い。特に、ミャンマーが2011年に軍事政権から民政に移管したのを受け、それまで緊急人道支援に限っていた政府開発援助(ODA)を法整備や経済環境整備などさまざまな分野に拡大したほか、日本企業の進出も本格化した。

2015年12月にオープンしたヤンゴン証券取引所(大和証券グループ提供)

 中でも鉄道は、同国の国づくりと再興をけん引する基幹インフラとして、優先的に支援を展開。最大都市ヤンゴンから首都ネピドーを通り、古都マンダレーまで国土を縦貫する幹線鉄道や、ヤンゴン市内を一周する環状線など、老朽化が深刻で発着の遅延が日常化している既存の鉄道を改修するために、手厚く協力してきた。

線路の上での作業中、列車の運転手と挨拶する日緬両国の鉄道技術者たち(筆者撮影)

 おりしも、日本政府が掲げるインフラ輸出政策のもとで東京メトロがベトナム・ハノイ市で都市鉄道の運営を支援していく海外法人を立ち上げたり、日立車両が2012年、英国のIEP(都市間高速鉄道計画)の生産(製造)、車両リース、保守を受注したりするなど、日本の鉄道会社各社が相次いで海外進出に乗り出した時期と重なったことから、ミャンマーへの鉄道支援も高い関心を呼んでいる。

職場体験に訪れた中学生が新幹線ホームで駅スタッフに質問する様子を見守るチョーさんとモォンさん(JR東日本提供)

 そんな中、JR東日本は4月よりベトナムから11人の技能実習生を受け入れ、車両メンテナンスの実習を行ってきた。今回の研修は、その第二弾であると同時に、下部組織である東日本鉄道文化財団が2014年度より続けてきたミャンマー国鉄からの招へい事業に続くものでもある。同社で海外鉄道プロジェクトを推進する国際事業本部ではなく、人材戦略部がこの研修を所管しているという点には、直接的な将来のカウンターパート候補を招くものというより、都市化の進展とともに環境にやさしい技術のニーズが高まっているアジア諸国を対象に、ESG経営(環境、社会、企業統治の3つの観点を意識した企業経営)の一環として国際鉄道人財の育成を掲げる同社の姿勢が色濃く表れている。

ページ:
1

2

3 4

関連記事

 

ランキング

  1.  ドットワールドとインターネット上のニュースサイト「8bitNews」のコラボレーションによって20…
  2.  11月5日に投開票が行われた米大統領選挙では、接戦という事前の予想を覆して共和党のドナルド・トラン…
  3.  11月5日に投開票が行われた米大統領選でトランプ氏が再選したことによって、国際情勢、特に台湾海峡の…
  4.  政治的に不安定な国や地域に囲まれながらも、比較的安定した治安と政治を維持してきた中東の王国ヨルダン…
  5.  ジャーナリストの玉本英子さん(アジアプレス・インターナショナル)が10月26日、東京・青山で戦火の…

ピックアップ記事

  1.  ドットワールドと「8bitNews」のコラボレーションによって2024年9月にスタートした新クロス…
  2.  米国・ニューヨークで国連総会が開催されている最中の9月25日早朝、中国の大陸間弾道ミサイル(ICB…
  3.  「すべてを我慢して、ただ食って、寝て、排泄して・・・それで『生きている』って言えるのか?」  パ…
  4.  今秋11月5日に投開票が行われる米大統領選挙は、現職のジョー・バイデン大統領が撤退を表明し、波乱含…
  5.  かつて恵比寿の東京写真美術館で、毎年開催されていた「世界報道写真展」。その拠点となるオランダ・アム…
ページ上部へ戻る