JR東日本がアジアの鉄道人財の育成を開始
ミャンマー国鉄の駅員が上野駅にやって来た
- 2020/2/5
「良いサービス」の心を伝える
上野駅での実習中、2人と特に密接に行動を共にしたのが、入社8年目の東尾明奈さんと、13年目の植松健悟さんだった。
東尾さんは、ホームドアなどの安全装置がなぜ設置されているのか、その理由や使い方、そして、点字ブロックや車椅子を必要としている利用者への接し方と配慮の仕方など、主に安全とバリアフリーの観点から、彼らに繰り返し話をした。「自分が誰かに教えるというのは初めての経験で、責任の重大さを感じて緊張した」と控えめな東尾さんだが、「行き交う人々に常に目を配り、助けを求めている様子の利用者をいち早く見つけては、持ち前の明るい笑顔で積極的に話し掛ける姿が印象的だった」と、チョーさんとモォンさんは口をそろえる。「ミャンマーでも、障がい者の社会参加が進んでいる。車椅子利用者に対するサービスを学ぶことができたのは、とてもタイムリーで良かった」「東尾さんを見ていて、お客様から尋ねられるのを待っている受け身の姿勢では良いサービスを提供できないことがよく分かった」と、反応も上々だ。
一方、サービスを提供する際の心構えを熱く説いたのは、植松さんだ。数年前、駅で途方に暮れている海外からの観光客を見かけ、東京の観光名所をいくつか紹介して交通手段の相談にも乗ったという植松さん。あくまで業務の一環として当たり前のサービスを提供しただけで、特別なことをしたつもりはなかったが、しばらくして本国に戻ったその観光客から思いがけずお礼の手紙が届き、言葉に表せないほどの喜びとともに、忘れられない出来事になった。その時、期せずして胸の中に沸き起こった「もっと良いサービスを提供できるようになろう」という決意を、植松さんは今もなお、駅に立つたびにかみしめ、誓いを新たにしているという。
「良いサービスを提供し、感謝していただくことは、お客様のためだけでなく、自分自身の喜びと、次へのモチベーションにもつながる。それを自覚し、気持ち新たにお客様に接してほしい」。自身の経験から培ってきた信念をチョーさんとモォンさんに話す植松さんの言葉には、そんな思いが込められていた。