キリバスと中国の警察協力受け入れを発表
南太平洋で進行する「ミニ中国」化に警戒を募らせる西側諸国
- 2024/3/4
アジアの民主主義国家、日本の役割
南太平洋諸国で中国のプレゼンスが強まれば、米国やイギリス、オーストラリアなどの西側諸国にとって、アジア太平洋における安全保障の枠組みが揺るがされかねないという問題が起きる一方、南太平洋上の島嶼国も、以下の理由から深刻な矛盾に直面することになるだろう。
中国の警備は民主主義の法治やルールを無視したやり方で行われるため、仮に中国との警務協力によって治安が維持されたとしても、それは決して自由な民主主義国家が理想とする形ではない。中国による警察協力は、現地の警察能力を強化するためというより、むしろ中国式の社会管理システムを輸出するために行われる。さらに言えば、中国は、民主主義が確立していない途上国の国々を、権威主義的な管理国家、すなわち「ミニ中国」に変えることを狙っているのではないか、とすら疑われるのである。
実際、中国の警察は、各国で芽生えた民主化運動の芽を中国式の暴力的なやり方で弾圧する方法を伝授している。例えばソロモン諸島では、マライタ州アウキに住む著名な民主活動家が、中国警察から研修を受けた現地警察によって未明に襲撃されたり、民主的デモが暴力的に鎮圧されたりしている。どちらのケースも、これまでのソロモン警察には見られなかった、暴力的なやり方だったという。
米国政策研究所は2022年、「中国警察の国際的影響力の拡大」と題したレポートを発表した。それによれば、中国共産党はグローバルな安全ルールについてさらなる影響力を行使するために中国警察の国際化を奨励し、「公共安全に関する新しい国際協力制度」を確立しようとしているという。つまり中国は、これまで世界の警察役を担ってきた米国に代わり、「中国式」の国際秩序や安全保障の枠組みを再構築しようという野心の下に各国と警務協力を進め、海外派出所をせっせと増設しているというわけだ。
だが、こうした中国式の安全保障枠組みや国際秩序は、はたして南太平洋上の島嶼国の国々にとって「望むところ」なのだろうか。例えば、2011年から中国警察による研修を受け入れてきたフィジーは2023年6月、「われわれの法治と司法の制度は、中国と異なる。類似した国々との協力を復活させるべきだ」と主張し、ランブカ首相が中国との警務協力の見直しを表明した。
国民を統制し、搾取する独裁者を志す為政者であれば、中国警察の協力は歓迎すべきものかもしれない。だが、その協力は、決して国家としての発展や現代化、成熟につながらないうえ、国民の幸福が実現するわけでもないだろう。
こう考えると、南太平洋島嶼国から期待されるべき存在なのは、アングロサクソン系の国家ほど傲慢ではなく、かつ、アジアの民主主義国家として最も成功している日本ではないだろうか。日本政府には、ぜひそうした自意識を持ち、南太平洋島嶼国へのアプローチを強化してほしいと思う。