中国の一帯一路と対ラオス鉄道支援
メコンを渡る国際列車に乗って考えたこと
- 2019/10/9
厳しい状況に直面するタイの鉄道
一方、前出の昆明からシンガポールに至る高速鉄道計画の中に含まれるもう一つの国が、タイだ。ラオス国境の街ノンカイから首都バンコクまでの約620キロを高速鉄道が走る予定だ。そこで、同じ区間を走っている特別急行寝台列車に乗ってみることにした。
19時30分、バンコク行きの夜行寝台列車は、定刻通りノンカイ駅を出発した。中国製の車両は清潔で、筆者は998バーツ(約2,794円)の2等下段席に乗ったが、タイの鉄道でお馴染みの油と埃が混じった匂いもなければ、「ガタン、ドタン」という大きな音もしない。食堂車でwifiが利用できたのには驚いた。熟睡している間に、予定通りバンコク駅に到着した。
近年、タイの鉄道は厳しい状況に直面している。LCC(格安航空会社)の飛行機や長距離バスなど、鉄道と同じ価格帯で、鉄道より運行本数が多く利用者にとって便利な交通手段が急増しているからだ。メコン川を渡る列車をはじめ、鉄道は熱烈ファンや外国人旅行者に一定の人気があるものの、今後の運営が、地元タイの人々の利用をいかに掘り起こせるかにかかっているのは間違いない。
また、タイでは、日本も加わって、北タイの中心地チェンマイとバンコクを結ぶ新幹線の整備計画が動いていたが、とん挫する気配が濃厚だ。LCCや長距離バスと乗客の奪い合いが激化する中、今日の人口と経済力から割り出される鉄道の潜在利用者数が、巨額の建設費に見合わないというのが大きな理由だ。
さらに、タイ政府は2017年、バンコクからナコンラチャシマ(通称:コラート)にいたる253キロに中国政府と協力して高速鉄道を建設すると発表したが、実際には大幅に遅れ、完成の目途は立っていない。
ラオスの10倍の人口を擁し、27倍の経済力を誇るタイで、こうして高速鉄道の計画が次々と遅れている現状は、ラオスにとっても気になるところだ。