「ミャンマーの惨状を忘れないで」
最終日迎えた在日ミャンマー人のクラファンに1500万円超が集まる

  • 2022/4/30

 ミャンマーで2021年2月1日にクーデターが発生してから、一年以上が経過した。日本ではマスメディアの報道も減りつつある一方、ミャンマーではいまも軍による激しい弾圧が続いている。「ミャンマーを忘れないでほしい」。母国の惨状に胸を痛める在日ミャンマー人らは、そんな想いを胸に、いまもさまざまな活動を続けている。その一つ、ミャンマーで困窮する人々に医療や食糧を支援するため、今年3月1日に始まったクラウドファンディングが、4月30日、最終日を迎えた。ミャンマー地域を専攻し、プロジェクトチームの一人でもある筆者が、クラウドファンディングに込められた関係者の思いを綴る。

軍の空爆によって全焼した村(cクラウドファンディングサイトより

減り続ける関心に危機感

 筆者がこのクラウドファンディングに携わるようになったのは、週末に一緒に募金活動を行っている方から声をかけていただいたことがきっかけだ。

 立ち上げ人の中には、各国で活躍する医療やIT分野のミャンマー人らによって結成された支援団体「ISMSP」(International Society of Myanmar Scholars and Professionals)の一員として、母国で職を失った公務員のための支援を行ってきたメンバーもいる。クラウファンディングの立ち上げメンバーであるスーウィンイーさんやキンゼッヤーミンさんらは、日本で継続して支援を呼びかけてきたにもかかわらず、得られる支援額もマスメディアの報道も減少し続ける状況を目の当たりにし、「ミャンマーのことが忘れられつつあるのではないか」という不安を強く抱いていたという。

 これまでミャンマー支援のための街頭募金を続けてきた筆者も、クーデター直後に比べると足を止めてくれる人が減りつつあることに危機感を抱いていたことから、ぜひ日本にいるミャンマーの方々の力になりたいと思い、今回の立ち上げに参加することを決めた。

現地から届く悲痛な声

 このクラウドファンディングの対象は、クーデター以降、ミャンマー軍による空爆や放火でもともと住んでいた場所を追われている国内避難民や、職務をボイコットして軍事独裁に抗議する市民不服従運動に加わり解雇された公務員、そして、デモ中に負傷した市民を手当てしたことで国軍に追われる医療従事者などである。集められた資金は、市民団体のネットワークを通じてミャンマーに送り、ミャンマー国民から正当な民主政府として支持されている「国民統一政府」(NUG)や現地ボランティア団体によって人道支援に活用される予定だ(https://readyfor.jp/projects/freemm2022 )。

クラウドファンディングは、今日、4月30日の23時まで受け付けている

 ミャンマーでは国際社会からの支援が減り続けている上、国際機関からのわずかな援助物資も満足に行き届かず、今日食べる物すら手に入らない人々が日に日に増えている。国内避難民も60万人を超え、支援の需要は高まる一方だ。

 そんな現地の状況を1人でも多くの日本人に知ってもらおうと、プロジェクトチームではさまざまなイベントを企画してきた。

 4月2日には、ミャンマー支援を目的に設立されたレストラン「Spring Revolution Restaurant」にマスメディア関係者を招いて勉強会を開催。オンラインも入れると50人以上が参加した。在日ミャンマー人のメンバーらは、「現地では村人が殺害され、怖くて住み続けられない状況が続いている上、避難先でも空爆によって屋根すらないところで過ごしている」「国軍から逃げ回るうちに流産してしまった人や、親の葬儀にも出られなかった人もいる」と話し、現地から届いた悲痛な声を紹介した上で、参加者に理解と支援を呼びかけた。

 さらに、SNSで「#ミャンマーを忘れないで」を付けて投稿してもらうハッシュタグキャンペーンや、ミャンマーの新年を祝うために4月10日に日比谷公園で開催された「TOKYOダジャン祭り」での展示、駅前での街頭募金活動などを行ってきた。

「遠く離れても助ける友人になる」

 在日ミャンマー人の方々と共にプロジェクトメンバーとして活動する中で、筆者は、日々、彼らの優しさや力強さを実感している。母国の厳しい状況に胸を痛めながらも、明るい未来を信じて自分たちにできることを続けようとする誇り高い姿にたくさんのことを教えてもらっていると同時に、再び平和を取り戻すことができた時には、ミャンマーはどんなに素晴らしい国になるだろうかという希望も感じている。

 それでも、こんな綺麗な言葉で締めくくることができないのが、今のミャンマーだ。穏やかな日常を過ごしていた何の罪もない人の命が、今もたくさん奪われている。現地の人々が「声」を上げることすらできない苦しい状況にあるからこそ、日本にいる自分は、ミャンマーの人々が抱える「悲しみ」や「怒り」を含めた想いを大切にしながら、最大限のサポートを続けていきたいと思っている。

4月2日に開かれたメディア向け勉強会の様子 (c) プロジェクトチーム提供

 クラウドファンディングの受け付けは、4月30日の23時まで。メンバーらは、最終日の今日、自由が丘駅前で、昼(14:30〜17:30)と夜(21:00〜23:10)の2回、募金活動を行うことにしているほか、Facebook機能を利用してカウントダウンライブ配信を予定している。

 多くの方々からあたたかいご支援をいただいたおかげで、当初の目標額だった1000万円と、セカンドゴールとして設定した1500万円は、無事に達成できた。支援者の方々がサイトに残してくださったコメントを読んでいると、たくさんの日本の人々が力を貸してくれていることが実感され、あたたかい気持ちに包まれる。プロジェクトチームだけでなく、応援してくださったすべての方々と共に、ここまで来ることができた。

 とはいえ、ミャンマーで命の危険にさらされている人々がいる以上、人道支援に終わりはないし、本当の意味でゴールの達成を喜ぶこともできるのは、もう少し先になってしまうだろう。ウクライナ情勢をきっかけに世界が平和について考えるようになった今、どうかミャンマーにも目を向けてもらう人が一人でも増えてほしいと願いながら、この記事を書いている。

 最後に、このクラウドファンディングが立ち上げられた当初から使われているフレーズを紹介したい。

 「遠く離れても助ける友人になる」

 2011年3月の東日本大震災の後は、ミャンマーにいる決して裕福とは言えないたくさんの人々が支援金や物資を送り、日本にいるミャンマーの方々はボランティアとして被災地のボランティアに駆けつけてくれたと言う。

 クーデター後も、日本で地震などの天災が発生するたびに、ミャンマーにいる友人たちが心配して連絡をくれる。僕たちは、今、遠く離れた友人たちのために何ができるのだろうか。

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