「軍事クーデターが奪ったもの」
防空壕を堀り、武器を手に取り始めた若者たち
- 2021/4/27
【編集部注:】
軍事クーデターに抵抗しながらも、徹底的に不服従を貫いてきたミャンマーの若者たち。しかし、4月に入り、自宅に防空壕を掘って襲撃に備えたり、武器を手にする者が出てきたそうです。ストライキでは事態を変えられないと諦めた若者の様子に今後を案ずるFacebook投稿をご紹介します。
~ 以下、Facebook投稿より ~
カレン州に住む友達から「家の庭に防空壕を堀った」と聞いた。
まさか「お正月休み、何してた?」という世間話の返事に、こんな前時代的な答えが返ってくるとは思わなかったので、とっさに返事ができず、まごつく。
近所もみんな掘ったというから、彼の家だけが大袈裟なわけではないのだろう。
確かにカレン州では、3月27日(国軍記念日)に空爆が始まって以降、数万人の避難民が出ていると聞いていた。
今までにも、心配になって「そっちは大丈夫?」とたびたび電話をしていたのだが、そのたびに「うちの村は大丈夫だよ!」と明るく返されるので、いまいち深刻度がつかめなかったのだった。
今日も「防空壕を掘るなんて、どんなに怖い思いをしていたのだろう」と思いきや、「We are ready to be attacked!(攻撃される準備はバッチリだよ)」と笑う。
なんでそんなに平然としていられるの?と聞くと、「僕たちはカレン族だ。こういうのに慣れているんだよ」と言う。
どこか自慢げにすら聞こえる彼の言葉に、思わず天を仰ぐ。
「慣れている」
そう言えてしまうような事実が、確かにミャンマーにはある。
ミャンマーの少数民族地域では、独立以来、実に70年以上、ずっと国軍と武装勢力との武力衝突が続いてきた。
クーデターが起きる前から、世界で一番長い内戦を戦っている国なのだという。
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カチン州やカレン州をはじめとする辺境地域では、少数民族の武装勢力と国軍との戦闘が続いている。
(いまだに空爆も続いていることには、本当に絶望的な気持ちになる。)
実は、4月に入ってから、Generation Zと呼ばれる20歳前後の若者の中に、そうした少数民族の武装勢力に合流し、武装訓練を受ける人が出てきた。
非暴力での闘いを凄惨に弾圧され、仲間は次々とつかまり、それなのに国際社会も動いてくれず(少なくとも彼らにはそう見えている)、限界を感じ始めたのだろう。
実は以前ここにも登場したある青年も、ヤンゴンを離れ、武装勢力に合流したそうだ。
CDMの力を信じ、最後までヤンゴンで抗議し続けていた青年だ。
https://www.facebook.com/JapaneseDiaryFromMyanmar/posts/111750867659207
小柄で賢そうで、とても人に銃口を向けることなどできなさそうなのに。
CDMや抗議活動では事態を打開できないと、希望を失ってしまったのだという。
ショックだったし、何よりとても心配だ。
とは言え、「首都を急襲してMAL暗殺」などという具体的な計画があるわけではなさそうだ。
ただ、このままでは軍政が定着してしまう、という焦りが、若者を山岳地帯に向かわせ、武器を手に取らせている。
この先もしも本当に武装蜂起をして誰かを殺したら、彼らは加害者になる。
だけど、彼らは本来、加害者になるべきではなく、ひたすら一方的な国軍の被害者であったことを、そしてこのクソみたいな国軍にはっきりNOを突きつけられない国際社会の犠牲者であったことを、少なくとも私は覚えていようと思った。
軍事クーデターが奪ったのは、政権だけではない。
民主主義を、自由を、若者の将来をごっそりと奪い、ミャンマーの未来を傷つけ続けている。